エクサスケールコンピュータ

エクサスケール・コンピュータとは

エクサスケール・コンピュータ（英: Exascale Computer）は、1秒間に10の18乗回以上の浮動小数点演算を行えるコンピュータシステムを指します。この性能は「エクサフロップス」（exaFLOPS）と呼ばれ、コンピュータの計算能力を測る基準の1つです。主にスーパーコンピュータの分野でこの用語が用いられており、2021年1月現在、実際にこの性能を達成したシステムはまだ存在していませんが、その開発が進められています。特に、2020年4月にはFolding@homeプロジェクトが分散型コンピューティングによって1エクサフロップスの演算性能を突破しました。

エクサスケールの意義

エクサスケール・コンピューティングは、計算機科学に革命をもたらすと考えられています。これにより、天気予測や個別化医療といった分野での科学的な応用が大きく向上することが期待されています。特に、ヒューマン・ブレイン・プロジェクトなどで目指される人間の脳の神経レベルでの処理能力に匹敵することも期待されています。また、エクサスケールのコンピュータを初めて構築する国を巡る国際間の競争も見られます。

定義と技術的課題

コンピュータの性能評価には、浮動小数点演算の速度（FLOPS）が用いられます。このFLOPSの計測では、特に64ビットの倍精度浮動小数点演算が、多くの評価基準に利用されています。トップスーパーコンピュータリストであるTOP500では、この指標を基にしたランキングが行われています。

エクサスケール・コンピュータの潜在能力を最大限に引き出すには、データ集約型アプリケーションの開発が不可欠です。これを実現させるためには、効率的なプログラミング手法やランタイムシステムの導入が求められています。特にFolding@homeプロジェクトは、サーバーと数十万のクライアントを接続したネットワークモデルを利用して、エクサスケールの能力を証明しました。

歴史的な背景

最初のペタスケール（10の15乗FLOPS）のコンピュータは2008年に稼働しました。2009年のスーパーコンピューティング会議において、2018年までにエクサスケールが実現されるとの予測が立てられました。しかし、2014年にはその実現可能性に疑問が持たれるようになりました。2018年には、Summit OLCF-4が異なる指標を用いて計算を行い、注目を集めました。この背景には、2020年3月にFolding@homeが1エクサフロップスの能力を初めて達成したことがあります。

国別の取り組み

米国

米国では、エクサスケール・コンピュータの開発が積極的に進められています。2008年には政府機関が協力して開発を進めるための予算を組み、2012年にはインテルがこの分野への投資を決定しました。近年、Aurora、Frontier、El Capitanといった各プロジェクトが進行中で、エクサスケールコンピュータの稼働が期待されています。

日本

日本でも、エクサスケールに向けた重要な取り組みがあります。理化学研究所計算科学研究センターは、2020年を目指して30メガワット未満のエクサスケールシステムを計画しました。その結果、富士通の「富岳」は2020年に稼働し、他国に先駆けて1エクサフロップスを達成しました。

中国

中国は、国防科技大学と連携して2020年中にエクサスケール・スーパーコンピュータの運用を開始する計画があり、現在も2台のスーパーコンピュータを保有しています。

欧州連合

欧州連合では、エクサスケール・コンピューティングを実現するためのプロジェクトに投資がされています。特にEuroHPC JUは、2022年から2023年までの目標を掲げています。

その他の地域

台湾、インドなども新しい技術やスーパーコンピュータの開発への取り組みを行っており、国際的なエクサスケール・コンピューティングの競争に参加しています。

結論

エクサスケール・コンピュータは、今後の技術革新において重要な役割を果たすことが期待されています。スーパーコンピュータの性能向上により、科学、医療、気象予測といった幅広い分野での活用が可能となり、私たちの生活や研究を一変させることでしょう。

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