エクスターミネーター

エクスターミネーター：不屈の闘士、そして愛される老骨

エクスターミネーター。その名は「皆殺し屋」を意味する。第一次世界大戦下のアメリカで、敵を次々と打ち破る強戦士をイメージして名付けられたこの競走馬は、アメリカ競馬史に燦然と輝く、伝説的な存在として知られています。ケンタッキーダービーを含む50勝という輝かしい戦績、そしてケルソ、フォアゴーと並ぶアメリカ競馬史上の最強去勢馬3強の一角として、その名を後世に伝えました。

しかし、エクスターミネーターは単なる勝利マシーンではありませんでした。彼はまた、「オールドボーンズ（老骨）」という愛称で人々に愛された、温かい心を持つ馬でもありました。その生涯は、数々のドラマと感動に彩られています。

意外なデビューとダービー制覇

元々は、厩舎の期待馬サンブライア（後のケンタッキーダービー最有力候補）の併せ馬として購入されたエクスターミネーター。2歳時は目立たない成績でしたが、運命の日は突然訪れます。ケンタッキーダービー当日、サンブライアが体調不良で出走不可能になったのです。急遽、代役として出走することになったエクスターミネーターは、7頭立ての最低人気にもかかわらず、2番人気のエスコバとの接戦を制し、見事ダービーを制覇しました。この勝利は、エクスターミネーターの潜在能力の高さを世に知らしめることとなりました。

古馬時代：幾多の激闘と記録

3歳シーズンを終えると、エクスターミネーターは古馬としてさらに過酷な戦いを強いられます。重いハンデキャップを背負いながらも、年間10勝ペースで勝利を重ね続けました。特に長距離レースでの強さは圧倒的で、サラトガカップでは2年連続のレコード勝ち、オータムゴールドカップでは世界レコードとなる3分21秒8を記録しました。

サラトガハンデキャップでは、三冠馬サーバートンに惜しくも2馬身差で敗れましたが、その実力は多くの関係者の間で認められました。この頃には、最強馬マンノウォーとの対戦が熱望されましたが、マンノウォー陣営の意向により実現しませんでした。これは、エクスターミネーターの強さを物語るエピソードといえるでしょう。

晩年：衰えぬ闘志と最後の記録

6歳以降、エクスターミネーターはほとんどのレースで60kg以上の斤量を背負うこととなります。圧倒的な強さゆえに少頭数のレースが増え、6歳時のサラトガカップでは単走レース（Walkover）になるという異例の事態も発生しました。

7歳時にも、ブルックリンハンデキャップでグレイラグを接戦の末に破り、サラトガカップでは4年連続制覇という金字塔を打ち立てました。既に引退したマンノウォーやサーバートンと比べても、エクスターミネーターは月2～3回の厳しい出走ローテーションをこなし続けました。しかし、シカゴのホーソン競馬場での招待レースでは、対戦相手が集まらず、再び単走レースに。この時、暫定ルールとして「タイムトライアル」方式が採用されましたが、エクスターミネーターは異例の低調なタイムでゴール、単走レースで「敗れる」という珍しい記録を作ることになりました。

8歳以降は衰えが見え始め、9歳時のクイーンズホテルハンデキャップを最後に、通算100戦を戦い抜いたエクスターミネーターは引退しました。

伝説の競走馬

エクスターミネーターの生涯は、並外れたタフさと、勝利への強い意志、そして人々からの温かい愛情に満ちたものでした。「皆殺し屋」という恐ろしい名前に反して、彼は「オールドボーンズ」という愛称で人々に慕われた、優しく強い馬でした。彼の50勝という輝かしい戦績は、単なる数字ではなく、不屈の闘志と、時代の寵児として走り続けた、一頭の競走馬の壮大な物語を物語っています。その名は、これからもアメリカ競馬史に永遠に刻まれることでしょう。

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