ケルソ

ケルソ：アメリカ競馬史に輝く不死鳥

1957年4月4日、アメリカ合衆国で誕生したサラブレッド競走馬、ケルソ。その名は、馬主であるアレール・デュポン氏の友人、ケルソ・エブレット氏に由来します。ウッドストック牧場で生まれたケルソは、しかし、恵まれた体格や容姿とは無縁でした。痩せこけた体躯、臆病な性格、そして冴えない容貌。デビュー前のケルソは、関係者から「最も期待できない馬」と評されるほどでした。

しかし、獣医師の提案による去勢手術を経て、ケルソは成長を遂げます。体高は165センチ[[メートル]]に達し、胸元だけは立派なサラブレッドらしい容姿となりましたが、全体的には幾分貧弱な体型でした。それでも、その競走能力は周囲の予想をはるかに超えるものでした。

1959年9月4日、ケルソは競走馬としてデビュー。その後、カール・ハンフォード調教師の指導の下、蹄の薄さを改善するなど、細やかなケアを受けながら実力を伸ばしていきます。3歳シーズンは9戦8勝という圧倒的な成績を収め、クラシック戦線への出走はありませんでしたが、1936年以来となる3歳馬での年度代表馬に選出されるという快挙を達成しました。

4歳時には、当時の古馬戦線の花形だった「ニューヨークハンデキャップ三冠」（メトロポリタン、サバーバン、ブルックリンハンデキャップ）を制覇。この偉業は1953年のトムフール以来、史上3頭目という快挙でした。さらに、ジョッキークラブゴールドカップも制し、人気は絶頂に達します。「キング・ケリー」の愛称でファンから親しまれるようになります。

5歳時からは、キャリーバック、ボーパープルという強豪との三つ巴の戦いが展開されます。互角の戦いを繰り広げながらも、ケルソはウッドワードステークスを連覇、ジョッキークラブゴールドカップも3連覇を達成。年度代表馬にも3年連続で選出されました。この3年連続受賞は、アメリカ競馬史上初の快挙でした。

6歳時になると、ケルソはさらに進化を遂げます。新たなライバルの台頭にも負けず、ウッドワードステークス3連覇、ジョッキークラブゴールドカップ4連覇と、驚異的な強さを発揮。この年の獲得賞金は569,762ドルに上り、4度目の年度代表馬に選出されました。

7歳時、ケルソのライバルとして台頭してきたのはガンボウでした。幾多の激戦を繰り広げながらも、ケルソはジョッキークラブゴールドカップ5連覇を達成。そして、総獲得賞金で歴代1位に輝き、賞金王の座に就きます。ワシントンDCインターナショナルでも、ガンボウとの接戦を制し、アメリカレコードを樹立しました。

5年連続年度代表馬という偉業を達成したケルソは、8歳、9歳と年齢を重ねながらも現役生活を続け、1966年3月10日に引退。その通算成績は63戦39勝、獲得賞金は1,977,896ドルに及びました。この記録は、15年後にアファームドによって破られるまで、アメリカ競馬史に長く刻まれました。

1967年、ケルソはアメリカ競馬名誉の殿堂博物館入りを果たします。引退後もウッドストック牧場で余生を送り、1983年10月16日、疝痛により26歳で生涯を終えました。その偉大な功績は、ケルソの名前を冠した競走「ケルソステークス」として、現在もベルモントパーク競馬場で続けられています。チョコレートサンデー好きで、馬房のラジオ音楽を愛聴していたという愛らしい一面も持ち合わせていたケルソ。その生涯は、決して恵まれたものとは言えませんでしたが、その努力と才能、そして周囲の人々の支えによって、アメリカ競馬史に不滅の功績を残しました。

ケルソの血統と評価

ケルソの父は、サンタアニタダービーなどで活躍したユアホストです。ユアホストは重傷を負いながらも、手術を決行して種牡馬として生き残ったというドラマチックな過去を持っていました。デュポン氏はそれに感銘を受け、ユアホストの種牡馬株を購入したと言われています。

ケルソの血統は、その後のサラブレッド改良に大きな影響を与えたとされ、その評価は現在でも非常に高く、20世紀のアメリカ名馬100選において第4位にランクインしています。ケルソの生涯は、努力と才能、そして人々の愛情によって奇跡を起こした、まさに不死鳥のような存在であったと言えるでしょう。彼の伝説は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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