エクスプロイテーション映画

エクスプロイテーション映画

エクスプロイテーション映画（Exploitation films）は、1950年代以降にアメリカで制作された特異な映画ジャンルです。この映画の特徴は、話題性が高い題材や、センセーショナルなテーマを取り入れ、興行成績を狙った作品群であることです。その名は、これらのテーマを「利用・搾取する（exploit）」ことに由来しています。一般的には、物語や演技よりも性描写や暴力が強調され、主流映画では取り扱われない過激な内容を売りにした低予算の作品が多く、特に限定的な上映にとどまることが多かったです。しかし中には、熱狂的なファンを持つ作品もあり、それらは「カルト映画」として長期間上映され続けました。

歴史

草創期

エクスプロイテーション映画の原点は、1930年代まで遡ります。当時は観客をひきつけるために、性、売春、中絶、不倫などの過激な題材が映画として大量に製作され、多くの観客を魅了しました。その代表的な作品には、『魂の交流』『損なわれた者』などがあります。これらの作品は、センセーショナルな内容が宣伝で強調され、多くの観客を惹きつけました。

市場の拡大

1934年にハリウッドの自主規制であるプロダクション・コードが施行されると、こうした題材はあまり表面化しなくなりました。しかし、第二次世界大戦後に若者を中心とした観客層の変化と、ドライブインシアターの人気により、再び過激な作品が登場しました。1946年には、エクスプロイテーション映画という言葉が映画情報誌『バラエティ』で初めて用いられました。

1950年代にはこの動きが加速し、アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ（AIP）が設立され、低予算で非行に走る若者やホラー映画、サーフィン映画などが制作されました。特にロジャー・コーマンが監督した作品群は、その後カルト映画として知られるようになります。

性の見世物

1960年代に入ると、プロダクション・コードは形骸化し、性的内容を多分に含んだ作品が増加しました。ラス・メイヤー監督の『インモラル・ミスター・ティーズ』は代表例で、この作品はわずか4日間で制作され、大ヒットを記録しました。このブームにより、多くの制作者が参入し、短期間に多くの作品が作られるようになります。

多様化へ

1970年代半ばには、アメリカ映画界全体が変化し、エクスプロイテーション映画がメジャースタジオから注目を集めるようになりました。ラス・メイヤーはその過程で大手スタジオからの依頼を受け、新作を制作しました。しかし、1970年代後半からはハードコア・ポルノの台頭により、旧来のエクスプロイテーション映画は減少していきます。

日本における展開

日本では映画検閲が厳しく、アメリカのようなあからさまな性描写は少なかったものの、低予算で猟奇的な題材を扱った作品が生まれました。戦前には「化け猫映画」と呼ばれるサブジャンルが台頭し、戦後も新東宝がエクスプロイテーション映画の伝統を引き継いで様々な作品を製作しました。

エクスプロイテーション映画のサブジャンル

エクスプロイテーション映画は多様なスタイルを持ち、ブラックスプロイテーション、ジャッロ映画、ハグスプロイテーションなど、さまざまなサブジャンルが存在します。それぞれのジャンルには独自の特徴があり、時代や文化の影響を受けて変化を遂げています。

再評価と影響

エクスプロイテーション映画の大半は男性の作り手によって制作されましたが、昨今ではフェミニスト映画批評の観点からの評価も進んでいます。また、低予算の現場は後に名監督となる若い製作者にとって映画製作を学ぶ重要な舞台となりました。このように、エクスプロイテーション映画は単なる低俗作品の枠を超え、多くの文化的影響を持つジャンルとして再評価されています。

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