エクセター本

エクセター本（英語: Exeter Book、ラテン語: Codex Exoniensis）は、10世紀の古英語詩を集成した貴重な書籍です。初代エクセター司教レオフリクがエクセター大聖堂の図書館に寄贈したと伝えられています。成立年代は960年代から990年代と推定され、古英語文学の研究において重要な位置を占めています。

現存するエクセター本は、元々あったとされる最初の8ページが失われ、また別の8ページが移動した状態にあります。しかし、それでもなお、当時の文学作品を現代に伝える貴重な資料としての価値を失っていません。

収録されている主な詩

エクセター本には、様々なテーマや形式の詩が収録されていますが、特に有名なものとして以下の作品が挙げられます。

さすらう者 (The Wanderer)：孤独な戦士の心情を歌い上げた叙情的な詩です。厳しい運命に翻弄されながらも、過去の栄光を回顧し、生きる意味を問いかけます。
海をゆく者 (The Seafarer)：海への憧憬と、厳しい航海の現実を描いた詩です。危険を冒して海に出る船乗り（Seafarer）の心情を通して、人生の苦難や信仰のあり方を表現しています。
ウルフとエーアドワチェル (Wulf and Eadwacer)：愛と苦悩を描いた謎めいた詩です。登場人物の関係性や詩の意味については、様々な解釈が存在します。
ウィドシース (Widsith)：様々な王や英雄、民族について語る詩です。吟遊詩人（Widsith）が各地を旅して見聞した事柄を語る形式で、当時の社会や文化を知る手がかりとなります。
女の嘆き (The Wife's Lament)：夫に捨てられた女性の悲しみと孤独を歌った詩です。絶望的な状況の中で、過去の幸せな日々を回想し、嘆き悲しむ女性の心情が痛切に伝わってきます。
廃墟 (The Ruin)：古代ローマの都市の廃墟を目の当たりにした人物が、その繁栄と衰退を嘆く詩です。過ぎ去った文明の栄枯盛衰をテーマに、歴史の教訓を語りかけます。
* デーオルの嘆き (Deor)：宮廷詩人デーオルが自身の不遇を嘆く詩です。過去の苦難を乗り越えてきた英雄たちの例を引き合いに出し、自らを励まそうとする姿が描かれています。

これらの詩は、当時の社会や文化、人々の価値観を知る上で貴重な資料であると同時に、普遍的な人間の感情や経験を表現した文学作品としても高く評価されています。エクセター本は、古英語文学を代表する重要な書物として、今日まで多くの研究者や読者に読み継がれています。

ジョージタウン大学迷宮図書館、エクセター本

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