エクセラー

エクセラー：悲劇の英雄、その栄光と影

エクセラーは、アメリカ合衆国生まれの競走馬です。フランスとアメリカで活躍し、数々のタイトルを獲得したわけではありませんが、その競走成績は、アメリカの競馬史に特筆すべき一頁を刻みました。特に、アメリカ三冠馬シアトルスルーとアファームドを破ったジョッキークラブゴールドカップステークスの勝利は、伝説として語り継がれています。

ヨーロッパでの活躍：

エクセラーは、セリで27,000ドルという低い価格で取引されました。これは、活躍馬であった母と優れた種牡馬である父の血統を考えれば、驚くべき安値です。購入者であるネルソン・バンカー・ハントは、名牝ダリアの馬主としても知られる人物でした。ハントはエクセラーをフランスへと送り込みました。

フランスでは、同厩舎の強豪馬エンペリー（エプソムダービー優勝馬）とユース（ジョッケクルブ賞優勝馬）の存在もあり、春のレースでは彼らとの対戦を避ける戦略を取られました。しかし、それでもパリ大賞典を制覇。さらに秋には、ロワイヤルオーク賞も優勝し、長距離G1競走でその実力を証明しました。4歳時には、コロネーションカップとサンクルー大賞とG1レースを連勝するなど、ヨーロッパを代表する競走馬として地位を確立しました。その後、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスにも遠征しましたが、惜しくもザミンストレルに僅差で3着となりました。

アメリカでの伝説：

キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス後、エクセラーはアメリカへ転厩しました。カナディアンインターナショナルステークスで優勝した後、当時アメリカ芝の最高峰レースであったワシントンDCインターナショナルで3着に入賞しました。しかし、彼のキャリア最大の輝きは、5歳時でした。この年、芝とダートのレースを合わせて10戦7勝という素晴らしい成績を残し、そのうち6勝がG1レースという輝かしい戦績でした。

中でも、シアトルスルーとアファームドという二頭の三冠馬を破ったジョッキークラブゴールドカップステークスは、彼のキャリアにおける白眉と言えるでしょう。スタート直後に鞍がずれるアクシデントに見舞われたにもかかわらず、アファームドの猛攻をかわし、不良馬場をものともせず、シアトルスルーとの壮絶な叩き合いを制しました。このレースは、エクセラーの驚異的な能力だけでなく、それまで評価が低かったシアトルスルーの強さを再認識させるものとなりました。この勝利の後も、オークツリー招待ハンデキャップを制しました。翌年も現役を続けましたが、精彩を欠き、結局1勝も挙げられず引退しました。

種牡馬としての失敗と悲劇的な最期：

1980年、エクセラーは種牡馬となりました。高額なシンジケートが組まれ、種付け料も高額でしたが、種牡馬としては成功しませんでした。1991年にはスウェーデンへ輸出されましたが、病気により種牡馬としての能力を失い、最終的には屠殺されました。このニュースはアメリカで大きな衝撃を与え、引退名馬の保護の必要性を訴える声が高まりました。

エクセラーファンドの設立：

エクセラーの悲劇的な最期を受け、関係者らによって引退名馬の保護を目的とした「エクセラーファンド」が設立されました。この基金は、エクセラーのような名馬が悲惨な最期を迎えることのないよう、彼らの引退後の生活を支援する役割を担っています。

エクセラーの評価：

エクセラーは、1999年にアメリカ競馬殿堂入りを果たし、ブラッドホース誌の選ぶ20世紀のアメリカ名馬100選にも選出されるなど、その功績は高く評価されています。彼の競走生活は短かったものの、その輝かしい活躍と悲劇的な最期は、多くの人々の心に深く刻まれています。彼の存在は、競走馬の引退後の生活の重要性を改めて考えさせる、一つの象徴となっています。

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