ワシントンDCインターナショナル

ワシントンDCインターナショナル：世界を繋いだ競馬の祭典とその終焉

1952年から1994年まで、アメリカ合衆国メリーランド州ローレル競馬場（現ローレルパーク[[競馬場]]）を舞台に、ワシントンDCインターナショナルという国際競走が開催されました。この競走は、当時アメリカで唯一の国際招待競走として、世界中のサラブレッドが集う一大イベントとして知られていました。

創設と隆盛：国際色豊かな競争

ジョン・D・シャピーロによって創設されたこの競走は、3歳以上のサラブレッドを対象とした芝2414メートルのレースでした。初期の頃は、アメリカでスターティングゲートが普及しつつあったにも関わらず、この競走だけは旗による発走という独特の方式が採用されていたといいます。

創設年にはイギリスの競走馬が優勝するなど、国際的な競争として早くから高い評価を獲得しました。1954年には、エリザベス2世、アリ・ハーンといった著名な馬主もこの競走に競走馬を送り込むなど、その人気は瞬く間に高まりました。冷戦時代にはソ連からの参加もあったとされ、文字通り世界を繋ぐ競走として名を馳せていました。

1980年代には、ニューヨークやカナダで開催される他の主要なターフ競走と合わせ、全てのレースで優勝した馬には100万ドルのボーナスが支払われるという賞金システムも導入されました。この賞金システムにより、競走はさらに注目を集めることになります。

衰退と消滅：時代の流れと競争激化

しかし、1980年代後半になると、この競走を取り巻く状況は変化し始めます。1981年にはジャパンカップやアーリントンミリオンといった新たな国際競走が誕生し、1984年にはブリーダーズカップが創設されました。これらの新たな競走の登場により、ワシントンDCインターナショナルの相対的な重要性は低下していったのです。

観客動員や売上の減少に直面したローレル競馬場は、1987年にワシントンDCインターナショナルをメインとした「インターナショナルターフフェスティバル」を創設するなど、立て直しを図りました。バドワイザーをスポンサーに迎え、競走名も変更するなど様々な試みが行われましたが、状況は改善せず、1993年にはブリーダーズカップの前哨戦として位置づけられるため、距離が短縮されました。しかし、翌1994年には距離を元に戻したものの、結局1995年には競走の中止が決定されました。

後継競走と歴史的意義

ワシントンDCインターナショナルは、その歴史の中で数々のドラマを生み出し、世界中の競馬ファンに感動を与え続けました。競馬界に多大な影響を与えた競走の1つとして、その歴史的意義は決して色褪せることはありません。

2005年にコロニアルダウンズ競馬場で行われていたコロニアルターフカップは、同競馬場の閉鎖に伴い、2015年からローレルパーク[[競馬場]]で「コモンウェルスターフカップ」として引き継がれ、2017年には「ボルチモアワシントンインターナショナルターフカップ」と改名されました。この競走は、ワシントンDCインターナショナルの後継競走として位置付けられており、その歴史と伝統を引き継いでいます。

主要な出来事

1952年：創設。3歳以上のサラブレッドによる芝12ハロン（約2400メートル）の競走としてスタート。
1958年：1着馬の降着という波乱がありました。
1959年～1960年：ボールドイーグルが連覇を達成。
1961年～1963年：名馬ケルソが3年連続で2着に入線。
1964年：ケルソが当時のアメリカ芝12ハロンレコードで優勝。
1973年：グレード制導入によりG1競走に格上げ。
1986年：施行距離が10ハロン（約2012メートル）に短縮。
1988年：バドワイザー社がスポンサーとなり、「バドワイザーインターナショナル」に改名。
1993年：施行距離が8ハロン（約1608メートル）に短縮され、「ワシントンDCインターナショナルマイル」として開催。
1994年：施行距離が10ハロンに戻されるも、翌1995年に競走は中止。

ワシントンDCインターナショナルは、国際交流の促進、競馬界の発展に大きく貢献した競走として、その歴史は長く語り継がれるでしょう。そして、その精神は後継競走であるボルチモアワシントンインターナショナルターフカップに受け継がれ、これからも未来へと続いていくことでしょう。

もう一度検索