エクソシストビギニング

概要

2004年に公開されたアメリカ映画『エクソシストビギニング』（EXORCiST: THE BEGiNNiNG）は、著名なホラーシリーズ『エクソシスト』の第四作目にあたります。本作は、シリーズ第一作で主人公と協力する高名な悪魔祓い師、ランカスター・メリン神父の過去に焦点を当てた前日譚として位置づけられています。第一作の舞台より約25年前に遡り、まだ信仰に疑問を抱いていた若きメリンが、どのようにして強大な悪魔と初めて対峙し、悪魔祓いの道へ進むことになるのかを描いています。

製作の舞台裏

本作の製作過程は極めて異例かつ複雑でした。当初、監督を依頼されたのは巨匠ジョン・フランケンハイマーでしたが、製作準備中に彼が逝去したため、ポール・シュレイダーが後任としてメガホンを取りました。シュレイダーは独特の視点で物語を構築し、一度は完成させますが、製作会社はその出来上がりを「地味」だと判断し、より商業的な要素やアクションシーンの追加を要求します。このため、新たにレニー・ハーリンが監督に起用され、シュレイダー版とは全く異なる内容で映画をゼロから撮り直すという事態に発展しました。結果として公開されたのはハーリン版『エクソシストビギニング』ですが、批評的な評価は芳しくありませんでした。これを受けて、製作会社は一度はお蔵入りさせていたシュレイダー版を、翌2005年に『ドミニオン』(Dominion: Prequel to the Exorcist)として公開する運びとなりました。主演のメリン神父役についても、当初はリーアム・ニーソンが候補に挙がっていましたが、スケジュールの都合により降板しています。

物語

第二次世界大戦が終結して間もない頃、ランカスター・メリンは信仰を失い、世界各地を放浪していました。やがて彼はアフリカに辿り着き、そこで古美術商との出会いをきっかけに、イギリスが主導する考古学発掘隊に加わることになります。発掘現場では、敬虔なフランシス神父、心に傷を抱える医師サラ・ノヴァック、そして現地の少年ジョセフといった個性的な面々と出会い、交流を深めていきます。

彼らの発掘作業は、ビザンチン時代の聖堂跡の地下に隠されていた、恐るべき魔神パズズの偶像を発見したことで転換期を迎えます。この偶像が発掘された頃から、周辺の村では不可解な出来事が頻発し始めます。住民の間に異常な興奮や暴力的な衝動が広がり、やがて凄惨な自殺や殺人事件が続発するようになります。メリンたちは、発掘によってかつてこの地に封じ込められていた邪悪な魂が解放され、人々に憑依してこれらの惨劇を引き起こしているのではないかと疑念を抱きます。

信仰を失っていたメリンでしたが、目の前で繰り広げられる理解不能な恐怖を前に、再び神の存在や信仰の意味と向き合うことを余儀なくされます。村を襲う邪悪な脅威に対抗するため、そして自身の内なる葛藤を乗り越えるため、メリンは古代の聖堂の地下深くに潜み、事件の根源となっている邪悪な存在と対決することを決意するのです。

評価と反響

公開された『エクソシストビギニング』は、製作の混乱が影響したか、批評家からの評価は概して低く、特に第25回ゴールデンラズベリー賞では最低監督賞と最低リメイク及び続編賞にノミネートされるという不名誉な結果に終わりました。シュレイダー版『ドミニオン』と比較されることも多く、それぞれのバージョンで物語の焦点や雰囲気が大きく異なる点が議論の的となりました。

主要スタッフ

監督：レニー・ハーリン
製作：ジェームズ・G・ロビンソン
製作総指揮：ガイ・マケルウェイン、デヴィッド・C・ロビンソン
原作：ウィリアム・ピーター・ブラッティ
脚本：ウィリアム・ウィッシャー、アレクシ・ホーリー
撮影：ヴィットリオ・ストラーロ
* 音楽：トレヴァー・ラビン

など、著名なスタッフが製作に参加しています。

本作は、『エクソシスト』シリーズのファンにとって、メリン神父の過去を知る上で興味深い作品ですが、その製作背景や評価は、シリーズの中でも特異な位置を占めています。

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