エコウィル

エコウィル（ECOWILL）は、日本の一般家庭向けに提供されていたコージェネレーションシステムの愛称です。2003年に登場し、約14年間にわたり販売されましたが、2017年9月末をもって新規受付を終了しました。

仕組みと概要

このシステムは、都市ガスやLPガスを燃料とする小型のガスエンジンで電力を発電し、その際に発生する高温の排熱を回収して給湯や暖房に利用するという画期的なものでした。エネルギーを二重に活用するコージェネレーション（熱電併給）の概念を家庭向けに小型化したものです。

当時の電力会社が進めるオール電化への対抗策として、ガス会社が電気市場に乗り込む戦略的な位置づけでもありました。ガス会社はエコウィルを導入することで、以下のようなメリットを訴求していました。

安定した湯供給: 補助熱源機との組み合わせにより、常時大量のお湯を供給できる。
光熱費の削減: 自宅での発電により電力会社からの購入電力量が減少し、ガス会社の専用料金メニューと合わせて全体の光熱費を抑えられる。
環境負荷の低減: 発電時の排熱を有効利用するため、エネルギー効率が高く、二酸化炭素（CO2）の排出量を削減できる。

エコウィルシステムは、ノーリツや長府製作所などが製造する給湯器ユニットと、本田技研工業やパーパスが製造・供給するガスエンジン発電機ユニットを組み合わせて構成されており、主に各地域のガス会社を通じて販売されていました。

その高い省エネルギー性と環境性が評価され、平成15年度の「省エネ大賞」会長賞や、平成16年度の「エコプロダクツ大賞」推進協議会会長賞などを受賞しています。

しかし、後継システムであるエネファームの普及などもあり、2017年9月30日に各ガス会社での新規申し込み受付が終了し、本田技研工業による発電システム供給も同年12月に終了しました。

メリットとデメリット

メリット

高いエネルギー利用率: 発電時に生じる熱を捨てずに給湯等に利用するため、火力発電所のように発電と熱供給を分離するシステム（約37%）と比べて、システム全体でのエネルギー利用率が92%と非常に高効率でした。
送電ロスが少ない: 電力消費場所である家庭内で発電するため、送電網を経由する際に発生する電力ロスがほとんどありません。
光熱費の削減: 自宅発電分だけ電力会社から購入する電力量が減るため、電気料金が削減されます。また、ガス会社によってはエコウィル専用の割引料金メニューが設定されており、ガス料金もお得になりました（年間で電気使用量が約40%減ったという実績も示されていました）。
湯切れの心配が少ない: 補助熱源機と併用する設計のため、急な大量のお湯の使用にも対応でき、湯切れの心配がほとんどありませんでした。
補助金制度: 国や一部の地方自治体による住宅向け高効率エネルギーシステム導入促進事業の対象となり、導入時にまとまった額の補助金や助成金を受けることができました。これは、同時期の他の省エネ給湯器（エコキュート約4.2万円、エコジョーズ約2.2万円など）と比較しても、エコウィルは10万円を超える高額な補助金（例：2009年度12.4万円）が得られる場合があり、導入の後押しとなりました。

デメリット

設置スペースの必要性: 発電で得た熱を一時的に貯めておくための貯湯タンクが必要であり、設置場所にある程度のスペースが求められました。
初期費用の負担: 一般的なガス給湯器と比較すると、システム価格が約80万円（2012年時点では工事費込み約50万円程度）と高額でした。ただし、後継システムである燃料電池型のエネファーム（100万円前後）よりは安価でした。
定期的なメンテナンス: システムの安定稼働のため、一定期間ごと（通常6,000時間の運転または3年のいずれか早い方）に専門業者による定期点検を受ける必要がありました。
発電量の変動: 貯湯タンクのお湯が満タンになると発電を停止する仕組みのため、お湯の使用量が少ない季節や時間帯には発電量が減少する傾向がありました。
最大発電量の限界: 一般家庭向けであったため、一度に発電できる電力は最大でも1kW（1,000W）程度に限られていました。
売電ができない: 自宅で発電した電力が余剰となった場合でも、電力会社に売却する（売電）ことはできませんでした。

主な製造メーカー

本田技研工業（発電機ユニット）
パーパス（発電機ユニット）
ノーリツ（給湯器ユニット）
長府製作所（給湯器ユニット）

エコウィル