エネファーム

エネファーム：家庭用燃料電池コジェネレーションシステム

エネファーム (ENE・FARM) は、家庭で電気と温水を同時に生成する家庭用燃料電池コジェネレーションシステムです。2008年、燃料電池実用化推進協議会 (FCCJ) が、家庭用燃料電池の普及促進を目的に制定した統一名称で、「エネルギー」と「農場 (ファーム)」を組み合わせた愛称が付けられました。シンボルマークは、電気や温水といった様々な恵みをもたらす木をモチーフとしており、低炭素社会の実現に貢献するシステムとして位置付けられています。

エネファームの仕組み

エネファームは、都市ガスやプロパンガスから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させることで発電します。発電時に発生する熱は温水として利用され、エネルギー効率を高めています。発電プロセスでは二酸化炭素を排出せず、省エネルギー性と環境性能を両立しています。

システムは、改質器、燃料電池スタック、インバータ、熱回収装置、貯湯槽、バックアップ熱源の6つの主要な装置から構成されます。改質器はガスから水素を生成し、燃料電池スタックで発電、インバータは直流電力を交流電力に変換します。熱回収装置は発電時の熱を回収して温水を作り、貯湯槽に貯蔵されます。バックアップ熱源は、貯湯槽の温水が不足した場合に温水を供給する役割を担います。これらの装置によって、燃料のエネルギーを約70～80%の効率で電力と熱に変換します。

メリットとデメリット

メリット

高効率の発電: 排熱を有効活用するため、発電効率が高いです。
送電ロスがない: 自宅で発電するため、送電ロスによるエネルギー損失がありません。
電気料金の削減: 家庭で使用する電力の4～6割をまかなえるため、電気料金を節約できます。
ガス料金割引: 一部のガス会社では、エネファーム専用の割引料金プランを提供しています。
湯切れの心配がない: 補助熱源機と併用することで、湯切れの心配がありません。
補助金制度: 設置時に補助金が支給される場合があります。
停電時にも発電可能: 災害時など停電時でも発電し、電力供給を確保できます。
レジリエンス性の向上: 災害時の停電時でも在宅避難が可能となり、生活の継続性を高めます。
省エネルギー意識の向上: 発電状況がリモコンで確認できるため、省エネルギー意識を高める効果があります。
SOFC型は余剰電力売電可能: SOFC型の場合、余剰電力を電力会社に売却できます。(ただし、買取価格は変動します)

デメリット

初期費用が高い: 100万円前後と、一般的なガス給湯器に比べて初期費用が高額です。
設置スペースが必要: 貯湯タンクの設置に、ある程度のスペースが必要です。
PEFC型は発電量が湯の使用量に依存: PEFC型は、貯湯タンクの湯が温まると発電が停止する仕組みです。
低周波音問題: 運転時に低周波音が発生し、近隣住民とのトラブルになる可能性があります。
エコキュートより熱効率が低い: エコキュートに比べて熱効率が低く、また改質過程でCO2を排出します。
余剰電力売電の買取価格の変動: 余剰電力の買取価格は固定されておらず、変動します。

普及状況と歴史

エネファームは、2009年から販売が開始され、住宅メーカーなどでも採用されています。国や自治体による補助金制度も導入され、普及促進が図られてきました。2001年には燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が設立され、2008年には燃料電池普及促進協会(FCA)が設立されるなど、業界全体で普及促進への取り組みが進められています。

低周波音問題

エネファームは運転時に低周波音を発生させるため、近隣住民とのトラブルが報告されています。頭痛、不眠、胸の圧迫感などの健康被害も報告されており、設置場所の選定や対策が重要です。低周波音対策として、機器の移設、ANC装置、マスキング音、防音エンクロージャーなどが考えられています。

製造メーカー

エネファームの製造メーカーとしては、パナソニック、アイシン、長府製作所、京セラなどが挙げられます。過去には、東芝燃料電池システムやENEOSなども製造していました。

まとめ

エネファームは、省エネルギー性と環境性能、災害時のレジリエンス性を備えた家庭用燃料電池システムです。導入を検討する際には、初期費用や設置スペース、低周波音問題などを含め、メリットとデメリットを総合的に判断することが重要です。

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