エコー (テレビドラマ)

エコー

マーベル・シネマティック・ユニバース（MCU）の新たな物語として、2024年1月に配信が開始されたドラマシリーズ『エコー』（原題: Echo）は、過去作『ホークアイ』（2021年）で初登場したキャラクター、マヤ・ロペス、ことエコーを主人公に据えたスピンオフ作品です。

概要と位置づけ

本作はマーベル・スタジオが手掛けるテレビシリーズとしては10番目の作品にあたり、MCUの広大な世界観や映画作品群と物語を共有しています。『ホークアイ』の後日譚として位置づけられ、物語の中心は聴覚障害を持ち、ネイティブ・アメリカンのチョクトー族にルーツを持つ女性、マヤ・ロペスです。全5エピソードで構成される本シリーズは、MCUのフェイズ5の一部を形成するとともに、特定のキャラクターに深く焦点を当てる新しい試み「マーベル・スポットライト」バナーの下で製作された最初のシリーズでもあります。製作にはマーベル・スタジオに加え、20世紀フォックステレビも参加しています。

特筆すべき点として、『エコー』はマーベル・スタジオ製作のドラマシリーズとして初めて、全エピソードが同時に一挙公開された作品であり、また、米国ではHuluでの放送も行われ、その内容からTV-MAという、比較的年齢制限の高いレーティングが付与されました。これは、これまでの週単位でのエピソード公開や、よりファミリー向けの内容が中心だったマーベル作品とは一線を画すアプローチと言えます。

ストーリー

物語は、『ホークアイ』での出来事を経て、傷ついたマヤ・ロペスが自身の生まれ故郷であるオクラホマへと戻るところから始まります。ニューヨークでの壮絶な過去から逃れるように帰郷した彼女は、自身のチョクトー族としてのルーツ、そして疎遠になっていた家族や地域社会との関係に再び向き合うことを余儀なくされます。自身の過去と対峙し、自身の文化や伝統に触れる中で、マヤは自分自身を受け入れ、癒やしを見つけようと葛藤します。故郷での人々との交流を通じて、マヤのアイデンティティや彼女の能力の源泉が掘り下げられていきます。

主要な登場人物

マヤ・ロペス / エコー
演 - アラクア・コックス
チョクトー族の血を引き、右足が義足で、聴覚障害を持つ聾者の女性。かつては犯罪組織トラックスーツ・マフィアのリーダーを務めていました。手話によるコミュニケーションと、相手の動きを模倣する身体能力を持ちます。
ウィルソン・フィスク / キングピン
演 - ヴィンセント・ドノフリオ（日本語吹替 - 玄田哲章）
ニューヨークの暗黒街を牛耳る巨大な犯罪王であり、マヤにとっては養父であると同時に、実父を殺害した張本人です。マヤに銃撃され、左目に傷を負っています。
マット・マードック / デアデビル
演 - チャーリー・コックス（日本語吹替 - 内田夕夜）
ニューヨークのヘルズ・キッチンを拠点とする盲目の弁護士。夜は仮面を被り、脅威に立ち向かう正義のヒーロー「デアデビル」として活動します。マヤとは過去に関わりがあります。
ヘンリー
演 - チャスク・スペンサー（日本語吹替 - 高橋英則）
チュラ
演 - タントゥー・カーディナル（日本語吹替 - 宮寺智子）
スカリー
演 - グレアム・グリーン（日本語吹替 - 小林操）
ビスケッツ
演 - コディ・ライトニング（日本語吹替 - 落合福嗣）
ボニー
演 - デヴァリー・ジェイコブス（日本語吹替 - 櫻庭有紗）
マヤにとって重要な存在となる、意志の強い人物です。
* ウィリアム・ロペス
演 - ザーン・マクラーノン
マヤの亡き父であり、かつてトラックスーツ・マフィアを率いていました。

キャストには、主人公エコー役のアラクア・コックスをはじめ、ウィルソン・フィスク役のヴィンセント・ドノフリオ、マット・マードック役のチャーリー・コックスら、『ホークアイ』を含む過去のMCU作品に登場した俳優陣が再集結しています。また、デヴァリー・ジェイコブス、グレアム・グリーン、チャスク・スペンサー、タントゥー・カーディナルなど、主にネイティブ・アメリカンの血を引く俳優陣が多数起用されており、作品のリアリティとテーマ性を深めています。

製作過程

『エコー』の製作は2021年3月には報じられ、アラクア・コックス主演のスピンオフ企画が進行中であることが明らかになりました。同年11月には正式にシリーズ化が発表され、マリオン・デイアがヘッドライター（脚本統括）に就任。シドニー・フリーランドが監督を務めることも決定し、後にカトリオナ・マッケンジーも監督として参加することが発表されました。脚本・製作総指揮はマリオン・デイアが務めています。

製作チームは、特に聴覚障害を持ち、ネイティブ・アメリカンまたはラテン系の血を引く女性のキャスティングに重点を置きました。これは、主人公エコーのアイデンティティを尊重し、多様性を重視する製作姿勢を示しています。撮影は2022年4月下旬から8月下旬にかけて、主にアトランタ都市圏で行われました。音楽はマト・ワユヒが手掛けています。

当初、本作は2023年中盤の配信を目指していましたが、その後何度か延期され、最終的に2024年1月10日に世界同時配信となりました。この配信形式の変更も、マーベル・スタジオにとっては新たな試みとなりました。

プロモーション

作品のプロモーションは、2022年のD23エキスポで最初の映像が公開されたことから始まりました。この映像では、エコーのネイティブ・アメリカンとしてのルーツや、彼女の持つ強靭な身体能力、そして作品全体のタフなトーンが強調されました。2023年11月には初の公式予告編が公開され、そのアクションシーンの激しさや、ウィルソン・フィスク、そしてマット・マードック／デアデビルの登場が大きな話題を呼びました。また、チョクトー・ネーションの年次パウワウで最初の2エピソードが先行上映されるなど、主人公のルーツであるコミュニティへの配慮や連携も行われました。

『エコー』は、MCUにおいて新たなキャラクターの深掘りや、特定の文化背景に焦点を当てる試みとして注目されるシリーズです。

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