エゴン・ヴェレス

エゴン・ヴェレス（Egon Wellesz, 1885年10月21日 - 1974年11月9日）は、オーストリアを代表する作曲家、そして音楽学者として、その生涯を通じて多大な功績を残しました。

生涯と音楽的背景

1885年、ウィーンで生まれたヴェレスは、ウィーン大学でグイド・アドラーに師事し音楽学を学びました。さらに、アルノルト・シェーンベルクから対位法を個人的に指導を受け、作曲家としての基礎を築きました。1908年には博士号を取得し、初期の研究はバロックオペラとビザンティン音楽に焦点を当てていました。

1911年から1915年までウィーン音楽院で音楽史の講師を務め、教育者としての才能も発揮しました。また、1920年には師であるシェーンベルクの伝記を執筆し、その音楽思想を世に広める役割も担いました。1922年には、国際現代音楽協会の設立メンバーの一人として、現代音楽の発展に尽力しました。1929年にはウィーン大学の員外教授に就任しましたが、ユダヤ人であったため、1938年のナチス・ドイツによるオーストリア併合を機に、オランダを経由してイギリスへと亡命せざるを得なくなりました。

イギリスでは、オックスフォード大学で講師として教鞭をとり、後に名誉博士号を授与されました。しかし、第二次世界大戦中には「敵性外国人」とみなされ、1940年にマン島のハッチンソン収容所に一時的に収容されるという苦難も経験しました。1943年に釈放された後も、イギリスで研究と作曲活動を続けました。彼の門下生には、日本人作曲家の橋本國彦がいます。

作風と主要作品

ヴェレスの音楽は、後期ロマン派の伝統を受け継ぎながらも、20世紀の新しい音楽潮流を取り入れた独特なスタイルを持っています。彼の作品は、交響曲、弦楽四重奏曲、劇付随音楽など、多岐にわたります。

交響曲:
ヴェレスは9つの交響曲を作曲しており、それぞれの作品が独自の個性を持っています。
交響曲第1番 作品62（1945年）
交響曲第2番 作品65「イングランド風」（1947-48年）
交響曲第3番 作品68（1949-51年）
交響曲第4番 作品70「オーストリア交響曲」（1951-53年）
交響曲第5番 作品75（1955-56年）
交響曲第6番 作品95（1965年）
交響曲第7番 作品102「奔流に逆らって」（1967-68年）
交響曲第8番 作品110（1970年）
交響曲第9番 作品111（1970-71年）

管弦楽曲:
交響詩「初春」(Vorfrühling, Sinfonisches Stimmungsbild für Orchester) 作品12（1912年）は、初期の作品であり、その豊かな色彩感が特徴です。
「プロスペローの魔法」 作品53（1934-1936年）は、シェイクスピアの「テンペスト」を題材にした五つの交響的作品で、劇的な構成と描写が印象的です。

音楽学者としての側面

ヴェレスは、作曲家としての活動と並行して、音楽学者としても重要な貢献をしました。特に、バロックオペラやビザンティン音楽の研究において、その先駆的な業績は高く評価されています。彼の研究は、当時の音楽史研究に新たな視点をもたらし、後世の研究者たちに大きな影響を与えました。

後世への影響

ヴェレスの音楽は、その複雑な構造と深い感情表現によって、聴衆に強い印象を与えます。彼の作品は、現代音楽の発展に大きな影響を与え、今日でも多くの音楽愛好家や研究者によって演奏、研究されています。

主な参考文献

Robert Scholium, "Egon Wellesz, Osterreichische Komponisten des XX. Jahrhunderu, II (Vienna, 1964)"
Hans F. Redlich, "Egon Wellesz," The Musical Quarterly, XXVI (1940), 65-75
Rudolph Reti, "Egon Wellesz, Musician and Scholar," ibid., XLII (1956), 1-13.

もう一度検索