エサキタイコウチ

エサキタイコウチ

エサキタイコウチ（学名：Laccotrephes maculatus）は、カメムシ目に含まれるタイコウチ科の仲間で、水中で生活する昆虫です。東南アジアから台湾にかけての広い範囲に分布していますが、日本国内では沖縄県八重山列島の与那国島という、ごく限られた地域にのみその姿を見ることができます。

特徴と生態

成虫はタイコウチによく似た細長い体形をしていますが、より小型で、尻部にある呼吸管を除いた体長は2センチメートルに満たない程度です。体の背面は暗い茶色をしており、腹面は背面よりもやや明るい色合いをしています。前脚の腿節（たいせつ）の根元近くには小さな突起があり、これが本種を見分ける際の特徴の一つとなります。

エサキタイコウチは、日当たりの弱い、落ち葉が積もったような浅い湿地や、人工的なコンクリート護岸が施されていない自然な状態の水路など、流れの緩やかな比較的浅い水辺を主な生息場所としています。与那国島では、かつて水田に多く生息していたタイワンタイコウチが激減したことにより、本種が水田へと生息域を広げる傾向も見られます。成虫はほぼ一年を通じて観察することができ、小魚やオタマジャクシなどを捕らえて餌としています。

保全状況

日本国内におけるエサキタイコウチの生息地は与那国島に限られており、その範囲は非常に狭いです。近年、宅地開発や農地整備に伴う水域の埋め立て、あるいは農業の衰退による水田の耕作放棄など、様々な要因によって、本種が生きられる水辺の環境が著しく減少しています。このため、国内での絶滅が深刻に懸念されています。

このような状況を受け、エサキタイコウチは日本のレッドリストにおいて保全上の位置づけがされています。2020年3月に環境省が公表したレッドリスト2020では、「準絶滅危惧（NT）」に分類されています。また、沖縄県が2017年に発行した沖縄県版レッドデータブック第3版では、さらに危機度が高い「絶滅危惧IB類（EN）」とされており、その保全の必要性が強く認識されています。

国内での分布が限定的であること、そして生息環境の悪化が進んでいることから、エサキタイコウチの今後の動向が注視されています。

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