タイコウチ

タイコウチ（太鼓打）

タイコウチ（学名：Laccotrephes japonensis）は、カメムシ目タイコウチ科に分類される水生昆虫の一種です。別名としてタイコタタキ、紅娘華とも呼ばれます。

名称の由来

和名の「タイコウチ」は、その前脚の動きが太鼓を打つように見えることに由来します。英名では「water scorpion」と呼ばれますが、これはタイコウチ科の昆虫全般を指す総称であり、ミズカマキリ属やヒメタイコウチも同様に呼ばれます。また、和名のタイコウチもタイコウチ科の総称として使われることがあります。

分布

タイコウチは、北海道と伊豆諸島を除く日本全国に分布しています。琉球列島では沖縄島以北に生息しています。ただし、奄美大島では近年記録されていません。主に小川や水田などの浅い水域に生息していますが、生息数は少ないとされています。

形態と生態

成虫の体長は30～35mm程度で、体色は褐色、体型は紡錘形をしています。特徴的なのは鎌状に発達した前脚で、これにより獲物を捕獲します。腹部先端には長い呼吸管があり、水面に出して呼吸を行います。肉食性で、魚類、他の水生昆虫、オタマジャクシなどを捕食します。獲物を捕らえると、口吻から消化液を注入し、溶けた体組織を吸い込む体外消化を行います。

タイコウチは11月頃に陸上や水中で越冬し、寿命は2～3年ほどです。危険を感じると脚を縮めて擬死をする習性があります。

繁殖

産卵期は5月から8月にかけてです。雌は水辺の土や苔に、10本程度の呼吸糸を持つ卵を数個から10個程度ずつまとめて産み付けます。孵化した幼虫は、約2ヶ月の間に5回の脱皮を繰り返して成虫になります。

飼育

タイコウチを飼育する際には、水底から呼吸管が水面に出る程度の水深に調整します。水深が深い場合は、水草や木の枝などを入れて足場を作ると良いでしょう。餌は小魚の他に、陸生の昆虫も与えることができます。飛翔能力があるため、飼育容器には蓋をする必要があります。

タガメなどと異なり、タイコウチは生きた水生小動物を必須としないため、飼育は比較的容易です。水面に小さな昆虫を落とせば、それを捕食して幼虫も成虫も育てることができます。また、水質の悪化にも比較的強く、水生昆虫飼育の入門種としても適しています。

近縁種

日本には、タイコウチ属の昆虫が3種生息しています。タイコウチの他に、以下の2種が知られています。

タイワンタイコウチ (Laccotrephes grossus)：国内では八重山諸島の石垣島と西表島のみに分布。国内希少種に指定されており、採集は禁止されています。
エサキタイコウチ (Laccotrephes maculatus)：国内では八重山諸島の与那国島のみに分布しています。

また、タイコウチ科にはヒメタイコウチ属も含まれており、日本には以下の1種が生息しています。

ヒメタイコウチ (Nepa hoffmanni)

その他

関連項目

水生昆虫
水生カメムシ類
指標生物

外部リンク

* タイコウチ（セミ・カメムシ館）

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