エジプトの国旗

エジプトの国旗：歴史と象徴

エジプトの国旗は、水平に並んだ赤、白、黒の三色帯に、中央に金色のサラディンの鷲が描かれたデザインです。このデザインは、エジプトの歴史とアイデンティティを象徴的に表現しています。

赤色は、1952年のエジプト革命で流された血、そして革命以前のイギリスによる植民地支配や王政による抑圧された時代を象徴しています。白は、王政打倒による革命の到来、明るい未来への希望を表しています。黒は、イギリスの植民地支配と王政による抑圧からの解放、そして暗い過去からの脱却を意味しています。さらに、赤、白、黒の三色は、第一次世界大戦中のオスマン帝国に対するアラブ反乱で使用されたアラブ反乱旗の色と同じであり、汎アラブ色とも呼ばれ、アラブ民族の結束を象徴しています。

中央に描かれた金色のサラディンの鷲は、エジプトの国章であり、勇気、強さ、そしてエジプトの誇りを象徴しています。サラディンは、中世イスラム世界の偉大な指導者として知られており、エジプト国民にとって重要な歴史的象徴となっています。

国旗の使用と規定

エジプトでは、国旗は政府機関や公共施設で掲揚されます。具体的には、金曜日、祝祭日、人民議会の開催日、その他内務大臣が指定する日には、すべての政府関係の建物に国旗を掲げる必要があります。税関や国境検問所では毎日掲揚されます。また、国外のエジプト大使館や総領事館では、祝祭日、国家的な記念日、エジプト大統領の来訪時には国旗を掲げなければなりません。

国旗に対する敬意も法律で定められています。制服を着用していない国民は、国旗に敬礼をする際には気をつけの姿勢で立ち、手と腕を体の横につけなければなりません。国旗を侮辱する行為は犯罪であり、法に基づいて罰せられます。

エジプト国旗の歴史的変遷

エジプトの国旗は、長い歴史の中で幾度か変化を遂げてきました。

ムハンマド・アリー朝 (1805年-1922年): ムハンマド・アリー朝時代の国旗は、赤地に白い三日月と星が描かれていました。これは、オスマン帝国からの独立志向と、アジア、アフリカ、ヨーロッパの三大陸での勝利への願望を表していたと考えられています。

エジプト王国 (1922年-1952年): 1923年に制定されたエジプト王国の国旗は、緑地に白い三日月と三つの星が描かれていました。三つの星は、エジプト、ヌビア、スーダンの三地方、またはイスラム教、キリスト教、ユダヤ教の三宗教を表すとされています。

エジプト共和国 (1952年-1958年): 1952年の革命後、当初は王政時代の緑の旗が維持されましたが、その後、現在の赤、白、黒の三色旗に変更されました。中央には、現在のサラディンの鷲とは異なるデザインの鷲が描かれていました。

アラブ連合共和国 (1958年-1971年): シリアとの統一国家であるアラブ連合共和国時代には、汎アラブ色である赤、白、黒の三色旗に、エジプトとシリアを表す二つの緑の星が追加されました。

エジプト・アラブ共和国 (1971年-1984年): アラブ共和国連邦時代には、金色の鷹とアラビア語の文字が描かれた国旗が使用されました。

1984年以降: 1984年以降、現在のサラディンの鷲が描かれた赤、白、黒の三色旗が正式に採用され、現在に至っています。

エジプトの国旗は、単なる布切れではなく、エジプトの歴史、文化、そして国民のアイデンティティを象徴する重要な存在です。そのデザインには、エジプトの歴史と国民の意志が凝縮されています。

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