エジプトへ出発するモーセ (ペルジーノ)

エジプトへ出発するモーセ

ピエトロ・ペルジーノとその工房によって1482年頃に制作されたフレスコ画『エジプトへ出発するモーセ』は、旧約聖書の預言者モーセの旅路を描いた作品です。このフレスコ画は、ヴァチカン宮殿内のシスティーナ[[礼拝堂]]にあり、祭壇のすぐ右側の壁の最初の作品として、『キリストの洗礼』と対をなしています。

作品の構成

この絵画は、モーセがミディアンでの生活を終え、妻チッポラと共にエジプトへ向かう場面を描いています。モーセは、他の連作フレスコ画と同様に、黄色と緑色の衣服を身に着けています。

中央部分では、天使がモーセに対し、息子エリエゼルを割礼するよう命じています。これは、神ヤハウェとイスラエル人との契約の象徴です。この割礼の儀式は、画面右側に描かれています。興味深いことに、対となるフレスコ画『キリストの洗礼』は、初期キリスト教の著述家たちによって「精神的な割礼」と解釈されていました。これは、二つの場面が持つ象徴的なつながりを示唆しています。

背景には、モーセとチッポラが義父ジェスロに別れを告げる場面が描かれています。自然の描写も注目に値し、細い木々や、キリスト教における犠牲を象徴するヤシの木が背景の丘を彩っています。鳥たちが交尾する様子は、自然の再生のサイクルを暗示しています。また、画面左側には羊飼いたちが描かれています。翻るドレスを身に着けた女性の姿は、当時のフィレンツェの絵画によく見られるもので、ドメニコ・ギルランダイオやボッティチェッリも描いています。

歴史的背景

この作品の依頼は、ペルジーノがローマの旧サン・ピエトロ大聖堂の礼拝堂装飾を手がけていた1480年に遡ります。教皇シクストゥス4世はペルジーノの仕事ぶりに感銘を受け、ヴァチカン宮殿に新設された礼拝堂の装飾も彼に依頼しました。

この大規模なプロジェクトには、ペルジーノだけでなく、ボッティチェッリやギルランダイオといったフィレンツェの画家たちが参加しました。システィーナ[[礼拝堂]]におけるペルジーノの助手には、ピントゥリッキオが含まれていました。このフレスコ画の一部の人物は、長らくピントゥリッキオの作とされてきましたが、20世紀以降の美術史家によってその見解に疑義が呈されています。代わりに、アンドレア・ダッシジ、ロッコ・ゾッポ、あるいはロ・スパーニャやバルトロメオ・デッラ・ガッタといった、当時のペルジーノの協力者たちが描いた可能性が指摘されています。

まとめ

『エジプトへ出発するモーセ』は、物語性豊かな場面構成と、宗教的象徴が込められた傑作です。ルネサンス期の巨匠たちの合作であり、システィーナ[[礼拝堂]]を訪れる際には、ぜひとも鑑賞したい作品の一つです。

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