エジプト・アラビア語版ウィキペディア

エジプト・アラビア語版ウィキペディアとは

エジプト・アラビア語版ウィキペディア（ويكيبيديا مصرى）は、アラビア語のエジプト方言（マスリ）で記述された、誰でも自由に編集できるオンライン百科事典です。主にエジプトのアラビア語方言話者に向けて、より身近な情報源を提供することを目的としています。2020年には、アラビア語の方言版として初めて設立され、その後モロッコ・アラビア語版も承認されました。

記事数は160万件を超え、25万人以上の登録ユーザーがいます(2020年時点)。エジプト国内でのウィキペディア各言語版のページビュー数では、アラビア語版、英語版に次ぐ第3位です。

成立の背景

エジプト・アラビア語版ウィキペディアは、2008年3月に設立が提案され、同年11月に正式に始動しました。創設者はGhalyというユーザーで、エジプト人ウィキペディアンを中心に、自分たちが日常的に使う言葉で百科事典を書きたいという強い思いがありました。背景には、エジプトの領土ナショナリズムを支持し、エジプト独自の文化を表現したいという願いがありました。

特徴

このウィキペディアの特徴は、以下の点が挙げられます。

エジプト・アラビア語（マスリ）を使用： 日常会話で使われる言葉で書かれているため、より親しみやすく、理解しやすい。
カイリーン式を採用： 地方語であるマスリ版は独立した言語として、記事が作成されています。
エジプト文化に特化： エジプトの歴史、文化、社会に関する情報が豊富。

議論と反応

エジプト・アラビア語版ウィキペディアは、設立当初から議論を呼びました。支持者は、エジプト・アラビア語がアラビア語の主要な方言であることを根拠に、その必要性を主張しました。一方、反対派は、標準アラビア語こそが百科事典の媒体としてふさわしく、方言版の作成はアラビア語の統一性を損なうと主張しました。

主な批判としては、方言で記述することでアラビア語が劣化するという意見や、プロジェクトの推進派がキリスト教徒であることから、アラブやイスラムへの敵対的な意図があるという陰謀論までありました。また、エジプト・アラビア語には文法規則がないため、百科事典の記述には不向きであるという意見もありました。

今後の展望

エジプト・アラビア語版ウィキペディアは、現在も発展を続けています。今後は、エジプト・アラビア語版ウィクショナリーの創設も目指しており、エジプトの言語と文化の普及に貢献することが期待されています。

言語を巡る問題は、政治や文化、アイデンティティと深く結びついています。エジプト・アラビア語版ウィキペディアの存在は、言語の多様性を尊重しつつ、知識を共有するための新たな可能性を示唆しています。

参考文献
Panović, Ivan (2010). The Beginnings of Wikipedia Masry.

外部リンク
Metaで行われた言語版創設の提案
ウィクショナリーの創設に向けて（エジプト・アラビア語版）

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