エスタディオ・ホセ・アマルフィターニ

アルゼンチンの首都ブエノスアイレス、その西部に広がるリニエルス地区に、エスタディオ・ホセ・アマルフィターニは雄大な姿を見せています。サルミエント線のリニエルス駅からほど近いこのスタジアムは、地元住民から「エル・フォルティン・デ・リニエルス」、あるいは単に「エル・フォルティン」（リニエルスの小要塞、小要塞）の愛称で親しまれています。この地を本拠地とするのは、アルゼンチンサッカーリーグに所属する名門クラブ、CAベレス・サルスフィエルド。さらに、アルゼンチンを代表するラグビーユニオンナショナルチーム、ロス・プーマスもホームグラウンドとして使用しています。スポーツイベントだけでなく、国内外の著名アーティストによる大規模コンサート会場としても利用されており、その用途は多岐にわたります。現在の公式収容人数は49,540人ですが、アルゼンチンの多くのスタジアムと同様、全ての観客席が固定された座席ではありません。コンサートなど特定のイベントでは、立ち見エリアを含めると50,000人規模の収容が可能とされています。

歴史

スタジアムの建設には長い道のりがありました。CAベレス・サルスフィエルドは、現在地に移る以前、近隣のビジャ・ルーロ地区で賃貸したグラウンドをホームとしていました。1932年に整備されたこの最初のグラウンドも、「エル・フォルティン」と呼ばれていました。しかし、1940年にベレスがプリメーラ・ディビシオン（1部リーグ）から降格したことを機に、チームはこの賃貸グラウンドからの撤退を余儀なくされます。新たなホームを求めるベレスは、1941年にブエノスアイレス西部鉄道が所有していた現在のリニエルス地区の土地を取得しました。この土地はマルドナード下水道の傍に位置し、頻繁に浸水する悪条件を抱えており、スタジアム建設は非常に困難なプロジェクトとなりました。こうした逆境の中、当時の会長であったホセ・アマルフィターニ氏が建設事業を強力に推進し、1943年にようやく竣工に至ります。完成したスタジアムには、旧グラウンドで使用されていた木造スタンドの一部が再利用されました。記念すべき開場試合は、CAリーベル・プレートを迎えて行われ、2対2の引き分けに終わりました。この試合でベレスのフアン・ホセ・フェラーロがチームの初得点を記録。リーベル・プレートからはアルゼンチンサッカー史に残る名選手アドルフォ・ペデルネーラが2得点を挙げています。その後、スタジアムはさらなる改修を経て、1947年から1951年にかけてセメント造りの堅牢な構造へと生まれ変わりました。

サッカーの舞台として

スタジアムが大きく拡張されたのは、開場から27年後の1978年です。この拡張は、アルゼンチンで開催されたFIFAワールドカップの開催地に選ばれたことによります。ワールドカップ本大会では、グループリーグの3試合がここで開催されました。翌1979年には、南米サッカーの祭典であるコパ・アメリカの会場となり、グループリーグの試合に加え、決勝戦のプレーオフも行われています。2001年には、FIFAワールドユース選手権（現在のFIFA U-20ワールドカップ）の舞台にもなり、3位決定戦と決勝戦という重要な試合が開催されました。これらの国際大会開催実績は、スタジアムの格式とインフラストラクチャーの高さを証明しています。

ラグビーの聖地

エスタディオ・ホセ・アマルフィターニは、アルゼンチン代表「ロス・プーマス」にとって長年にわたり重要なホームスタジアムとしての役割を担ってきました。多くの国際テストマッチがここで行われ、歴史的な試合の舞台となっています。例えば、2005年11月には南アフリカ代表「スプリングボクス」と対戦し、善戦しましたが惜しくも敗れました。2006年6月には、ウェールズ代表「レッドドラゴンズ」とのテストマッチ第2戦が行われ、ロス・プーマスが45対27で快勝。これはウェールズ代表に対する歴代最多得点差勝利記録となりました。その一週間後には、世界最強国の一つであるニュージーランド代表「オールブラックス」との激闘が繰り広げられ、19対25と僅差で敗れたものの、強豪相手に堂々たる戦いを見せました。2007年ラグビーワールドカップの前には、アイルランド代表とのテストマッチが行われ、16対0で勝利を収めて本大会に弾みをつけました。また、2016年からは南半球最高峰リーグであるスーパーラグビーに参加するアルゼンチンのフランチャイズチーム「ハグアレス」も、このスタジアムをホームとして使用していました。

多様なイベント会場

ホセ・アマルフィターニはスポーツイベントだけでなく、大規模なコンサート会場としても広く活用されています。1978年の拡張工事以降、多くの国内外のトップアーティストがこのスタジアムでパフォーマンスを行ってきました。コンサート開催時には、スタジアム全体で最大50,000人もの観客を収容することが可能となり、ブエノスアイレスの文化的な中心地の一つとしての側面も持っています。

このスタジアムは、サッカー、ラグビー、そして音楽イベントなど、多様な顔を持つブエノスアイレス西部の重要なランドマークであり続けています。

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