バターリャ修道院

ポルトガル、レイリア地方の都市バターリャに位置するバターリャ修道院は、正式には聖母マリア修道院（Mosteiro de Santa Maria da Vitória）と呼ばれ、ドミニコ修道会に属する壮麗な建築物です。この修道院は、ポルトガルにおける後期ゴシック建築の傑作として広く認められており、特にポルトガル独自の発展を遂げたマヌエル様式との融合が見られる点が特徴的です。切り妻屋根や尖塔、小尖塔、控え壁など、その威容は訪れる者を圧倒します。

バターリャ修道院は、単に建築美を誇るだけでなく、ポルトガル国家の独立を象徴する極めて重要な歴史的建造物でもあります。その価値が評価され、1983年にはユネスコの世界遺産に登録されました。

歴史

修道院の建設は1386年に始まりました。これは、前年の1385年 8月14日、バターリャ近郊で行われたアルジュバロータの戦いで、ジョアン1世率いるポルトガル軍がカスティーリャ王国軍を破り、ポルトガル王国の独立を確実なものとしたことに対する聖母マリアへの感謝を示すためでした。地名「バターリャ」自体がポルトガル語で「戦闘」を意味することからも、この場所と歴史的な戦いとの深いつながりがうかがえます。

建設は中断と再開を繰り返しながら約2世紀にわたり行われ、その間には7人のポルトガル国王が在位しました。この長い工期には、アフォンソ・ドミンゲス、フュゲット、フエルニヤーオ・ド・エヴォラ、マテウス・フェルナンデス、ディエゴ・ボイタック、ジョアン・ド・カスティーリョといった高名な建築家を含む、15人以上の建築家が関わりました。修道院の建設は、膨大な資源を投入した国家事業であり、同時にポルトガル国内に新たな建築技術や芸術様式が導入され、独自の建築文化が発展する契機ともなりました。

最初の建築家アフォンソ・ドミンゲス（1386年〜1402年）は、修道院の基本設計と初期の建設を指揮しました。彼の様式は、フランスのレイヨナン・ゴシックとイングランドの垂直様式の影響を受けており、イギリスの主要な教会建築との類似が見られます。続くフュゲット（1402年〜1438年）は、華麗なフランボワイヤン様式を導入し、身廊の高さを増すなど建築を大きく進めました。フエルニヤーオ・ド・エヴォラはアフォンソ5世の回廊を増築し、マテウス・フェルナンデスとディエゴ・ボイタックはマヌエル様式の要素を加えました。ジョアン・ド・カスティーリョはルネサンス様式を取り入れましたが、国王ジョアン3世がリスボンのジェロニモス修道院建設に注力することを決定したため、バターリャ修道院の建設は中断されました。

建設中断後、修道院は幾度かの受難に見舞われます。1755年のリスボン大地震で被害を受けたほか、1810年〜1811年のイベリア半島戦争時にはフランス軍による破壊で甚大な損害を被りました。さらに、1834年にドミニコ修道会が追放されると修道院は放置され、荒廃が進みました。しかし、1840年にフェルナンド2世が修復事業を命じ、20世紀初頭まで及ぶ大規模な修復が行われました。現在、修道院は博物館として公開されています。

建築構造と見どころ

バターリャ修道院の外装は、地元産の黄土色の石灰岩で築かれており、ゴシック、マヌエル、ルネサンスといった多様な様式が融合した姿を見せています。ドミニコ会教会の伝統に従い、鐘楼はありません。西側ファサードは広場に面し、その入口はアーチ・ヴォールトに旧約聖書の王や預言者、聖人など78体の彫像が並ぶ壮観な装飾が施されています。

身廊

高さ32m、幅22mの身廊は、二代目の建築家フュゲットによって設計されました。装飾は比較的控えめで、静謐な雰囲気に包まれています。リブ・ヴォールトの天井は高く、10枚のステンドグラスから差し込む光が内部を照らします。ポルトガルで初めてステンドグラスが導入された教会建築としても知られ、ドイツの芸術家によって作られた最古のものは1430年代のものです。身廊近くには建築家マテウス・フェルナンデス夫妻の墓があります。

創設者の礼拝堂（Capela do Fundador）

ジョアン1世の指示で1426年頃から建設された、ポルトガル初の王室パンテオンです。フランボワイヤン様式とイングランド垂直様式が融合したこの空間には、中央にジョアン1世と王妃フィリパ・デ・レンカストレの二重棺が安置されています。棺には両家の紋章やそれぞれのモットーが刻まれており、当時のポルトガルとイングランドの友好関係を象徴しています。礼拝堂には、エンリケ航海王子を含むアヴィス家の歴代国王や王子たちの墓も並んでいます。

未完の礼拝堂（Capelas Imperfeitas）

ドゥアルテ1世が第二の王室霊廟として1437年に着工しましたが、未完に終わった空間です。ドゥアルテ1世夫妻のみがここに埋葬されています。フュゲットが設計を手がけましたが、現在の姿は主にマテウス・フェルナンデスによるものです。入口は高さ15mに及び、マテウス・フェルナンデスによってマヌエル様式の傑作へと改められました。天球やロープ、植物などをモチーフにした華麗な彫刻が施され、マヌエル1世やドゥアルテ1世のモットーが繰り返し刻まれています。ジョアン・ド・カスティーリョによってルネサンス様式の涼み廊下も追加されました。

参事会室（Sala do Capitulo）

王の回廊の奥に位置する参事会室は、第一次世界大戦の無名戦士の墓が安置されている場所です。特筆すべきは、内部に柱がない状態で架かる巨大なヴォールト天井で、これはフュゲットの大胆な設計によるものと伝えられています。東壁にはキリストの苦難を描いたステンドグラスがあります。

王の回廊（Claustro Real）

当初の計画にはなかった回廊で、フエルニヤーオ・ド・エヴォラによって建設されました。ゴシック様式とマヌエル様式が融合した彫刻が見られます。回廊の北西角には、マテウス・フェルナンデス作の美しい洗盤が配置されています。

アフォンソ5世の回廊（Claustro de D. Afonso V）

王の回廊に隣接するこの回廊は、フェルニヤーオ・ド・エヴォラが15世紀半ばに建設したゴシック様式です。二つの尖ったアーチが特徴で、フランボワイヤン様式の王の回廊との対比が興味深い点です。ヴォールトにはドゥアルテ1世とアフォンソ5世の紋章が刻まれています。

バターリャ修道院は、ポルトガルの歴史的な転換点から生まれ、幾多の困難を乗り越えて現代にその姿を留める、建築史においても国家史においても比類なき価値を持つ遺産です。

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