エスファンディヤール・ラヒーム・マシャーイー

エスファンディヤール・ラヒーム・マシャーイー：イランの論争を呼ぶ政治家

エスファンディヤール・ラヒーム・マシャーイー（1960年11月16日 - ）は、イランの政治家であり、マフムード・アフマディーネジャード大統領の顧問を務めました。彼は大統領の親密な友人であり、第一の相談相手として知られています。また、彼の娘はアフマディーネジャード大統領の息子と結婚しており、縁戚関係にあります。

経歴

ラームサル出身のマシャーイーは、エスファハーン工科大学で電子工学の学士号を取得しました。1980年代のイラン・イラク戦争に従軍し、アフマディーネジャードとは「僚友」と称される関係でした。内務次官や文化遺産観光庁長官などの要職を歴任し、2009年には短期間、第一副大統領を務めましたが、保守派からの強い批判を受け辞任しました。その後、2009年から2011年まで大統領府長官を務めました。

見解と論争

マシャーイーは、文化的・社会的問題についてリベラルな見解を持つと評される一方、活発なナショナリスティックな思想や、イスラーム共和国の保守的体制を批判する発言で物議を醸しました。

2007年には、トルコでの式典で女性が伝統的なダンスを踊ったことに対し、イスラームの保守的解釈に反すると批判が起こりました。2008年には、テヘランで主催した式典で、コーランを壇に運ぶ際に女性がタンバリンを演奏したことが、コーランに対する崇敬を欠くと非難されました。

また、マシャーイーは複数回にわたり、親イスラエル的とも取れる発言をしています。彼は、「イラン人は世界の全ての人々の友であり、イスラエル人さえもそうだ」と述べ、紛争はイスラエル政府との間に過ぎないとしました。これらの発言は、イスラーム法学者や保守派議員から強い批判を受け、最高指導者アリー・ハーメネイーからも「非論理的である」と批判されました。しかし、アフマディーネジャード大統領は、これらの発言を慎重な言い回しで擁護しました。

2010年には、在外イラン人との集会で、シーア派イスラームよりもイラン的思想を広めるべきだと主張し、保守派の反発を招きました。彼は、イランのイスラームこそが「純粋なイスラーム」であり、他の国々が解釈するイスラームとは異なると述べました。さらに、イランなくしてはイスラームは失われるとし、他のイスラーム諸国はイランを恐れていると発言し、物議を醸しました。

これらの発言に対し、イラン軍統合参謀長は「国家安全保障に対する犯罪である」と非難し、イスラーム世界との軋轢を生むと警告しました。また、著名なイスラーム法学者は、マシャーイーの発言を「異教的ナショナリズム」であると批判しました。

アフマディーネジャード大統領は、マシャーイーを擁護し、「イランは文化・文明を持つ国であり、その主義としてイスラームを選んだのだ」と述べました。しかし、多くの批判にもかかわらず、マシャーイーは自らの発言を撤回しませんでした。

第一副大統領への任命と解任

2009年7月、アフマディーネジャード大統領はマシャーイーを第一副大統領に任命しましたが、この人事は保守派から激しい反発を受けました。最高指導者ハーメネイーは、マシャーイーに辞任を命じ、彼は数日後に辞任しました。

大統領府長官

第一副大統領辞任後、マシャーイーは大統領府長官に任命され、アフマディーネジャード大統領の側近としての地位を維持しました。2011年4月に大統領府長官を辞任しましたが、大統領補佐官として引き続き活動しました。

2013年イラン大統領選挙

アフマディーネジャード大統領は、憲法の規定により2013年の大統領選挙に出馬できませんでした。ウィキリークスが公開した外交公電によれば、マシャーイーはアフマディーネジャード大統領の後継者候補として目されていたと伝えられています。

マシャーイーは、その独特な思想と発言により、イラン国内外で大きな議論を呼びました。彼の政治的な影響力は、アフマディーネジャード政権下で特に顕著でしたが、保守派との対立や論争の的となることも少なくありませんでした。

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