エスリンゲン・アム・ネッカー・トロリーバス

はじめに

エスリンゲン・アム・ネッカー・トロリーバスは、ドイツ南西部に位置するバーデン＝ヴュルテンベルク州の都市、エスリンゲン・アム・ネッカー市において、市民の重要な足として機能している公共交通機関です。正式名称はドイツ語で「Oberleitungsbus Esslingen am Neckar」と呼ばれます。この路線は、2025年現在、ドイツ国内にわずか3ヶ所しか残されていないトロリーバス路線のうちの一つであり、その歴史と将来的な計画において注目されています。運行は、同市の公共交通を担うエスリンゲン・アム・ネッカー地方交通会社（Städtischer Verkehrsbetrieb Esslingen am Neckar、略称SVE）によって行われています。

歴史

路面電車の時代から転換へ

エスリンゲン・アム・ネッカー市内では、トロリーバスの開業に先立つ1911年から路面電車が運行されていました（エスリンゲン・アム・ネッカー市電）。第一次世界大戦による混乱とその後の復興を経て、都市の発展に伴い多くの利用客に恵まれました。しかし、第二次世界大戦が勃発すると、路面電車の多くの施設が戦火によって破壊され、残された区間も修繕が困難な状況に陥りました。このような背景から、戦前から計画されていたトロリーバスによって既存の路面電車網を置き換える方針が1943年に固まります。

トロリーバスの開業と戦後

路面電車が1944年 7月7日にその歴史に幕を閉じたわずか3日後の7月10日、エスリンゲン・アム・ネッカー・トロリーバスは営業運転を開始しました。第二次世界大戦後、西ドイツの多くの都市でトロリーバス路線が相次いで廃止されていく中で、エスリンゲンのトロリーバスは市民生活に不可欠な交通手段として定着し、多くの利用客を集めました。需要の増加に応えるため、1961年には路線の延伸も実施されています。

車両の近代化とデュオバス

利用客の増加に対応するため、エスリンゲンでは廃止された他都市のトロリーバス車両を導入することも行われました。さらに、1970年代以降は、架線が存在しない郊外への直通運転を可能にするため、充電池やディーゼルエンジンを搭載した画期的な車両、デュオバス（DUO-Bus）の導入を1988年まで進めました。ドイツ再統一後も車両の近代化は継続的に行われ、2002年以降はバリアフリーに対応したノンステップバスが導入されています。これに伴い、デュオバスは新型ノンステップバスへの更新が進み、2005年に運用を終えました。運用を終えたデュオバスの一部は、ディーゼルバスへの改造を経て他の都市へ譲渡されています。

運行系統

2021年現在、エスリンゲン・アム・ネッカー市内では、以下の2つの系統でトロリーバスが運行されています。

* （具体的な系統番号は提供情報にないため省略）

車両

現在の主力車両

2025年現在、エスリンゲン・アム・ネッカー・トロリーバスで主力として運用されているのは、ポーランドのメーカー、ソラリス社が開発した連接式のノンステップバス「トロリーノ18」です。この車両は、架線からの集電だけでなく、搭載されたリチウムイオン充電池の電力によって、架線がない区間でも走行可能な構造を備えています。2015年から2019年にかけて合計10両（車両番号501～510）が導入されました。特に、導入されたうちの4両（501～504）は、流線形の独特なデザインを持つ「トロリーノ18.75 メトロスタイル」という名称の車両です。

保存車両

かつてエスリンゲンのトロリーバス路線で運用されていた車両の中には、現在も動態保存されているものがあります。例えば、1962年から1982年にかけて使用された車両番号22や、2002年製の車両番号213が挙げられます。213は、エスリンゲン・アム・ネッカー・トロリーバスにおける初めてのノンステップバスの一つとして導入された歴史的に重要な車両です。

今後の展望

エスリンゲン・アム・ネッカー地方交通会社（SVE）は、環境負荷の軽減を目指し、既存のディーゼル路線バスについても充電池を備えたトロリーバス車両への置き換えを計画しています。当初、ベルギーのバンホール社製車両の導入が検討されましたが、同社の破産によって実現しませんでした。代わりに実施された入札を経て、チェコのシュコダ社が手掛けるシュコダ32Trおよび連接バスのシュコダ33Tr、合計46両、さらにオプションで15両の導入が決定しており、今後の路線網の拡大やサービスの向上が期待されています。

結び

エスリンゲン・アム・ネッカー・トロリーバスは、戦時下の困難な状況から生まれ、ドイツ国内で希少となった今もなお、時代の変化に合わせて技術革新を取り入れながら運行を続ける、歴史と先進性を併せ持つ公共交通機関です。将来にわたる持続可能な交通システムの構築に向けたその取り組みは、他の都市にとっても示唆に富むものでしょう。

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