エゾノツガザクラ

エゾノツガザクラ（蝦夷の栂桜）

分類と特徴

エゾノツガザクラ（学名：Phyllodoce caerulea）は、ツツジ科ツガザクラ属に分類される常緑性の小低木です。日本では、北海道から東北地方にかけての高山帯に分布し、適度に湿り気のある岩場や草地に群生します。高さは10cmから30cm程度で、7月から8月にかけて紅紫色の美しい花を咲かせます。

花は、6mmから8mmほどの小さな壺状で、枝先に2個から7個まとまって付きます。花冠の先は浅く5つに裂けており、反り返るのが特徴です。雄しべは10個あります。エゾノツガザクラは、その生育環境から高山植物として知られています。

生育環境と生態

エゾノツガザクラは、アオノツガザクラと生育地が重複することが多く、両種の雑種が頻繁に見られます。マルハナバチなどの昆虫が受粉を媒介しています。典型的なエゾノツガザクラの花冠はやや細長い形状をしていますが、アオノツガザクラとの雑種は花冠が丸みを帯び、花の色もやや淡くなる傾向があります。このことから、両種間の遺伝的な交流が活発に行われていると考えられます。

名前の由来とレッドリスト

エゾノツガザクラの名前は、その生育地である「蝦夷地（現在の北海道）」に由来し、「蝦夷に生えるツガザクラ」という意味が込められています。しかし、現在では生育地の環境変化により、個体数が減少しており、青森県ではレッドリストの絶滅危惧II類、岩手県では絶滅危惧IA類に指定されています。基準標本は、ラップランド（北欧の地域）のものとされています。

近縁種

エゾノツガザクラには、いくつかの近縁種や変種が存在します。

シロバナエゾノツガザクラ (Phyllodoce caerulea f. albiflora)：白い花を咲かせる品種です。
アオノツガザクラ：エゾノツガザクラとの間に様々な段階の雑種が存在します。それぞれの種の中間的な特徴を持つものも見られます。
コエゾツガザクラ (Phyllodoce caerulea f. yezoensis)：エゾノツガザクラの変種とされます。
ニシキツガザクラ (Phyllodoce caerulea f. marmorata)：葉に斑が入る品種です。
ユウパリツガザクラ (Phyllodoce caerulea f. takedana)：夕張山地に固有の変種です。

これらの近縁種は、エゾノツガザクラの多様性を示しており、分類学的にも興味深い存在です。

環境保全の必要性

エゾノツガザクラは、高山帯の厳しい環境に適応した貴重な植物です。しかし、近年では地球温暖化や環境破壊の影響により、生育地の減少や個体数の減少が懸念されています。そのため、その保護と保全が急務となっています。

参考文献

豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月、259-269頁。ISBN 4-635-09019-1。
林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月、287頁。ISBN 9784635090421。

関連項目

高山植物
* アオノツガザクラ

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