エゾミカサリュウ

エゾミカサリュウとは

エゾミカサリュウ（蝦夷三笠竜、学名：Taniwhasaurus 'mikasaensis'）は、中生代白亜紀後期に生息していた海棲の肉食爬虫類です。この生物は、有鱗目モササウルス科タニファサウルス属に分類されますが、化石の不完全さから、独立した種として扱うべきかについては議論が続いています。

発見と標本

エゾミカサリュウの化石は、北海道空知管内三笠市の幾春別川上流で発見されました。特に、上顎と下顎を含む頭骨の断片が重要な標本となっています。この頭骨断片は、長さ約30センチメートル、高さ約22センチメートル、幅約18センチメートルで、左眼窩の一部や、上下合わせて左側に10本、右側に7本の歯が確認されています。発見地周辺はアンモナイトの化石が豊富であり、エゾミカサリュウはこれらを食料としていたと考えられています。

研究の歴史

1976年6月21日、村本喜久雄氏によって発見された化石は、当初、国立科学博物館の小畠郁生氏によってティラノサウルス科の肉食恐竜である可能性が指摘され、「エゾサウルス・ミカサエンシス」として発表されました。しかし、その後の研究で、エゾミカサリュウの歯には陸生肉食恐竜に特有のセレーション（ギザギザ）がないことが判明し、海棲爬虫類である可能性が高まりました。1985年には、恐竜展のリストから外されています。

その後、三笠市教育委員会の研究により、エゾミカサリュウが、かつてゴンドワナ大陸南部でのみ発見されていたタニファサウルスの仲間であることが判明しました。この発見は、タニファサウルスがローラシア大陸沿岸にも生息していたことを示す重要な証拠となり、2008年にはタニファサウルス・ミカサエンシスとして正式に記載論文が発表されました。しかし、2019年の研究では、タニファサウルス属に属することは確実であるものの、別種として区別する十分な特徴がないとされ、タニファサウルス属の不確定種（Taniwhasaurus Indet 1. – “Taniwhasaurus mikasaensis”）として扱われるようになりました。

天然記念物としての指定

エゾミカサリュウは、当初、日本で初めて発見された肉食恐竜の化石として、1977年7月16日に国の天然記念物に指定されました。三笠市立博物館では、1979年の開館当初からエゾミカサリュウの化石を展示しています。後に、より完全なモササウルス類の化石が発見されたため、エゾミカサリュウが特別に貴重という状況ではなくなりましたが、現在も天然記念物としての指定は維持されています。

文化利用

エゾミカサリュウは、恐竜ではない可能性が高まったものの、三笠市ではティラノサウルス型の肉食恐竜としてのイメージが根強く残っており、観光振興に利用されています。三笠市立博物館前や桂沢湖畔には復元像が設置され、「三笠恐竜まつり」ではエゾミカサリュウを模したみこしが練り歩きます。また、マスコットキャラクター「リュウちゃん」も存在しています。しかし、学界ではエゾミカサリュウを恐竜として認識していないことが報道され、地元の落胆を招きました。近年では、海棲生物であることを伏せて大型肉食爬虫類として紹介されることもあります。

2009年頃からは、ゆるキャラブームに乗じて「りゅうちゃん」が復活し、着ぐるみも作成されました。プロフィールでは水泳が得意で好物がアンモナイトであるとPRされています。さらに2016年には近隣の芦別市で発見されたティラノサウルス類の化石が三笠市立博物館で展示され、三笠市周辺にもティラノサウルスの仲間が生息していたことが証明されました。

エゾミカサリュウの復元模型

三笠市立博物館には、全長約120センチメートルのエゾミカサリュウの復元模型が展示されています。この模型は、海洋堂の古田悟郎氏が造形を担当し、記載論文の共著者である小西卓哉氏が監修しました。

関連情報

• - 三笠市立博物館
• - 絶滅した動物一覧
• - 地質・鉱物天然記念物一覧
• - ヒタチナカリュウ（発見当初は翼竜とされていたスッポンの化石）

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