エチオピア高原

エチオピア高原

アフリカ大陸の北東部に広がる広大な高原地帯は、エチオピア高原、あるいはその旧称からアビシニア高原とも呼ばれています。この地域は、その地理的な特徴から「アフリカの屋根（Roof of Africa）」という別名でも知られています。

高原全体の平均標高は約2,300メートルに達し、最高峰であるラス・ダシャン山は標高4,620メートルを誇ります。このような高い標高にあるため、低緯度の熱帯地域に位置しているにもかかわらず、年間を通じて比較的穏やかで過ごしやすい高山気候が特徴です。気温の年間の変化も少なく、人々の居住に適した環境が広がっています。

この恵まれた気候条件が、エチオピアという国の人口分布に大きな影響を与えています。国土の大部分の人口やアディスアベバ、ハラールといった主要な都市は、このエチオピア高原上に集中しています。これは、低地の暑く乾燥した気候に比べて、高原の気候がより快適であるためです。

地形的には、アフリカ大陸を南北に縦断する巨大な割れ目である大地溝帯によって、この広大な高原は大きく東西に分断されています。厳密な地理区分では、この大地溝帯より西側の部分を狭義のエチオピア高原と呼び、東側の隆起した地域を東部高原として区別することもあります。

エチオピア高原は、その自然環境だけでなく、文化や経済においても重要な役割を果たしています。特に農業分野では、世界中で広く愛飲されているコーヒーの歴史と深く結びついています。

アラビカ種コーヒー（学名：Coffea Arabica）は、このエチオピア高原南西部のカッファ地方が原産地であるとされています。現在でも、エチオピアは世界有数の高品質なコーヒー生産国であり、コーヒーは国の主要な輸出品の一つとなっています。高原の多様な微気候と土壌が、独特の風味を持つコーヒー豆を生み出しています。

また、生物多様性の観点からも興味深い地域であり、独自の動植物が生息しています。関連事項として挙げられる猫の一品種であるアビシニアンは、かつてこの「アビシニア」高原が原産ではないかという説がありました。しかし、現在では古代エジプトがより有力な原産地と考えられていますが、その名称はこの高原の旧称に由来しています。

このように、エチオピア高原はアフリカ北東部における地理的、気候的な特異点であり、エチオピアという国家の骨格を形成する重要な地域です。その高い標高がもたらす独特の気候は、人々の生活や産業、そして豊かな生態系を育んできました。

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