エッジワース・ボックス・ダイアグラム

エッジワース・ボックス・ダイアグラム

エッジワース・ボックス・ダイアグラムは、消費者理論や生産者理論において、2つの財と2人の消費者、あるいは2つの生産要素と2人の生産者の関係性を分析するための図です。フランシス・エッジワースとアーサー・ボーリーにちなんで名付けられました。

概要

エッジワース・ボックスは、2人の消費者（例えばオクタビオとアビー）と2つの財（例えばXとY）が存在する経済を考えます。ボックスの横軸は財Xの総量、縦軸は財Yの総量を表し、ボックスの左下の原点はオクタビオの視点、右上の原点はアビーの視点となります。それぞれの原点から遠ざかるほど、その消費者の財の配分が増えることを意味します。

ボックス内には、各消費者の無差別曲線が描かれます。無差別曲線は、消費者が同じ効用を得られる財の組み合わせを示します。通常、無差別曲線は凸型であると仮定されます。

市場経済における交換は、初期賦存量（各消費者が最初に持っている財の量）から始まります。エッジワース・ボックスは、この初期賦存量から、どのような配分が効率的であるか、つまりパレート最適となるかを視覚的に表現するために使用されます。

歴史

フランシス・エッジワースがこのダイアグラムの原型を提示し、ヴィルフレド・パレートとアーサー・ボーリーの貢献によって、現在の形に発展しました。

市場均衡の概念はレオン・ワルラスによって提唱され、その後、多くの経済学者によって数学的に厳密化されました。均衡理論では、関数の微分可能性、無差別曲線の凸性などの仮定が置かれます。

市場均衡

エッジワース・ボックスを用いることで、市場均衡を視覚的に見つけることができます。市場均衡とは、追加的な取引が発生しない状態、つまり、資源配分が安定している状態です。この均衡点は、2人の消費者の無差別曲線が接する点として表現されます。この接点における接線は「価格線」と呼ばれ、均衡価格を表します。

もし無差別曲線が交差する場合、両方の消費者の効用水準を同時に改善できる領域が存在するため、その交点は均衡点とはなりません。

厚生経済学の第一定理

2本の無差別曲線が接する点はパレート最適です。また、2本の無差別曲線が共通の価格線の下で接する点は競争均衡です。したがって、競争均衡はパレート最適であると言えます。これが厚生経済学の第一定理です。

厚生経済学の第二定理

厚生経済学の第二定理は、適切な所得再分配を行えば、任意のパレート最適な配分を競争均衡として実現できることを示しています。

パレート集合

パレート集合（または効率曲線）は、パレート最適な配分の集合です。エッジワース・ボックスでは、2人の消費者の無差別曲線の接点を結んだ線として表現されます。パレート集合のうち、初期配分から両消費者の効用水準が上昇する部分を契約曲線と呼びます。

オファー曲線

オファー曲線は、各消費者が与えられた予算制約の下で効用を最大化するような消費点の集合です。エッジワース・ボックスでは、各消費者のオファー曲線が交差する点が均衡点となります。

オファー曲線の概念は、ヴィルフレド・パレートによって最初に提示されました。

エッジワース・ボックス・ダイアグラムは、一般均衡理論の基本的なツールであり、資源配分、市場均衡、厚生経済学の定理などを視覚的に理解する上で非常に有用です。

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