一般均衡

一般均衡理論

一般均衡（いっぱんきんこう）とは、経済学における一つの重要な概念で、特にミクロ経済学、価格理論の分野において広く用いられる。その特徴は、単一の財の市場での需給の決定に集中する部分均衡分析に対して、多数の財が相互に関連し合う市場全体での価格と需給の同時決定に焦点を当てる点にある。これを一般均衡分析と呼び、経済学の基礎的な理論として位置づけられている。

一般均衡理論は、1870年代にレオン・ワルラスによって考案された。この理論は後にパレートなどによって引き継がれ、特にローザンヌ学派の確立に寄与した。1950年代になると、ケネス・アロー、ジェラール・ドブルー、ライオネル・マッケンジーなどの研究者が、一般均衡の整合的な分析手法を発展させたことから、今日の市場分析における堅実な理論的基盤が築かれることとなった。

この一般均衡モデルにおいては、消費者と生産者は「プライステイカー」として機能し、市場に与えられた価格に従って行動する。ここでの市場は完全競争が前提となっており、すべての財の需給が一致する競争均衡価格の存在が理論的に証明される。また、競争均衡における資源の最適配分が満たされることを示した「厚生経済学の第一定理」も、一般均衡分析の重要な要点として多くの経済学者に認識されている。

この理論を理解するための一つのアプローチとしてエッジワースボックスが挙げられる。これは、二つの財と二人の消費者の相互作用を視覚的に示すことで、直感的な理解を助ける道具となっている。一方、非競争的市場の分析においては、製品差別のない寡占の状況を研究する方法として、非協力ゲーム理論が主流となっている。このことは、一般均衡分析がすべての市場に適用できるわけではなく、その限界を示す一例でもある。

一般均衡理論を構築する際、ワルラスは消費者と生産者が取引の全てを正確に把握しているという想定のもとに進めた。この視点は取引における不確実性を排除するものであるが、これは同時に貨幣の必要性を否定することにつながる。一般均衡理論は仮想的な世界を前提にしており、実際の経済世界では存在しないような条件下で成立している。

このような観点から、経済学者たちは一般均衡理論の限界についても検討を続けている。たとえば、フランク・ハーンは一般均衡理論が貨幣を無視することを指摘している。同様に、チャールズ・グッドハートとディミトリス・トゥソモコスも2011年の国際会議で、ワルラス系のモデルにおいて金融市場の完全性が仮定されていることから、貨幣の実質的な役割は存在しないことを明言している。彼らは、完全なリスクのない世界においては、貨幣の必要はなく、その背後には負債が完全には払われない実態があると強調している。

このように、一般均衡理論は市場のダイナミクスを理解する上での有力なツールであるが、その適用と解釈には様々な議論が存在する。理論の進化により、新たなアプローチが求められる中で、一般均衡理論は依然として経済学の根本的な議論の一部を成している。

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