エッセンシャル・フリップ&イーノ

エッセンシャル・フリップ＆イーノ

『エッセンシャル・フリップ＆イーノ』（原題：The Essential Fripp and Eno）は、革新的なギタリストとして知られるロバート・フリップと、環境音楽の提唱者であるブライアン・イーノが、共同名義「フリップ＆イーノ」として1994年にリリースしたベスト・アルバムです。この作品は、両者が過去に共作したアルバムからの主要な楽曲に加え、当時まで未発表だった音源を収録しており、彼らの共同作業の軌跡と発展を示す内容となっています。

収録内容

本アルバムは、フリップ＆イーノの初期の代表的なアンビエント・アルバムから選ばれた楽曲を中心に構成されています。具体的には、1973年に発表された彼らの最初の共作『ノー・プッシーフッティング』からアルバム全曲にあたる2曲が、そして1975年のアルバム『イヴニング・スター』からは2曲がそれぞれセレクトされました。これらの楽曲は、フリップのギター・サウンドとイーノのテープ・ループやシンセサイザーを組み合わせた、独特の瞑想的かつ実験的なアンビエント・サウンドを提示しています。

さらに特筆すべきは、1979年頃にレコーディングされながらも、このアルバムまで世に出ることがなかった未発表曲「ヘルシー・カラーズ」が4部構成で収録されている点です。この楽曲は、初期のアンビエント作品とは一線を画す、よりリズミカルで複雑なサウンドを展開しています。

評価

音楽評論家からの評価も高く、例えばThom Jurekはオールミュージックにて5点満点中4.5点という高評価を与えています。特に未発表の「ヘルシー・カラーズ」については、従来のフリップ＆イーノの作品とは根本的に異なるサウンドであると指摘しています。この楽曲では、デジタルのドラム・ループが使用され、ふんだんにサンプリングや多彩なサウンド・エフェクト、音響処理が活用されており、単なるアンビエントにとどまらない、リズムとテクスチャに富んだ実験が行われています。Jurekはこの「ヘルシー・カラーズ」におけるサウンドの試みが、イーノが後にデヴィッド・バーンと制作したコラボレーション作品『マイ・ライフ・イン・ザ・ブッシュ・オブ・ゴースツ』や、フリップがキング・クリムゾンを再結成して発表したアルバム『ディシプリン』といった、両者のその後の活動における重要な方向性を予見させるものであると論じています。

また、『CDジャーナル』のミニ・レビューでも「ヘルシー・カラーズ」に言及されており、ミニマル・ミュージックを基調としながらも、反復する軽快なビートとヴォイス・コラージュを組み合わせたサウンドであると評されています。

『エッセンシャル・フリップ＆イーノ』は、彼らの初期アンビエント期の集大成であると同時に、より複雑でリズミカルなサウンドへの過渡期をも捉えた、両者のキャリアにおいて重要な位置を占める作品と言えるでしょう。

収録曲リスト

本アルバムに収録されている全楽曲は、ロバート・フリップとブライアン・イーノの共作によるものです。

1. ザ・ヘヴンリー・ミュージック・コーポレーション - "The Heavenly Music Corporation" - 21:00
2. スワスティカ・ガールズ - "Swastika Girls" - 18:38
3. ウィンド・オン・ウォーター - "Wind on Water" - 5:26
4. イヴニング・スター - "Evening Star" - 7:50
5. ヘルシー・カラーズI - "Healthy Colours I" - 5:38
6. ヘルシー・カラーズII - "Healthy Colours II" - 5:41
7. ヘルシー・カラーズIII - "Healthy Colours III" - 5:33
8. ヘルシー・カラーズIV - "Healthy Colours IV" - 5:43

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