エッチ

エッチ(H)の語源と歴史：日本語俗語の変遷

「エッチ(H)」は、性的な意味合いを持つ日本語の俗語です。アルファベットのHを、古風な発音で読んだことに由来し、性的にいやらしい様子や、そのような人物を指します。類義語として「エロ（エロスの略）」があります。1980年代以降は、性行為を婉曲的に表現する場合にも使われるようになりました。

語源に関する諸説

「エッチ」の語源については、諸説が入り乱れています。代表的な説を以下にまとめます。

1. 変態(Hentai)説:
最も有力な説の一つです。古くは明治時代から、性的な隠語として使用され始め、大正時代には同性愛者を指す隠語としても用いられていました。現代的な意味合いで使われ始めたのは1950年代頃で、1955～56年に朝日新聞で連載された舟橋聖一の小説『白い魔魚』が一般への普及に貢献したと言われています。1996年のインタビューで80歳男性は、小学生の頃に「変態」という言葉を知り、そこから「エッチ」に変化したと証言しています。

2. 英語由来説：
複数の英語の単語を語源とする説が存在します。
Husband(夫)説: 明治時代の女学生が、夫の頭文字Hを性的な意味で用いたという説。
Hen(雌鶏)説: 大正～昭和初期、男性同性愛者を指す隠語として使われたという説。不良仲間の間で使われた可能性も指摘されています。
letch(助平な)説: 英語の単語「letch」に由来するという説。
horny(性欲をかき立てられて)説: 英語の単語「horny」の頭文字Hに由来するという説。
Help(助ける)説: 大日本帝国海軍で、「助平」を意味する英語「Help」の頭文字Hとして使われていたという説。他の海軍用語と同様に、アルファベットを用いた隠語として使用された可能性があります。
HELL(地獄)説: 石井幸之助の著作『報道班員従軍記』には、海軍の隠語としてHが挙げられており、「地獄」に関連付ける記述があります。
破廉恥(Harenchi)説: 「破廉恥」のローマ字表記の頭文字Hに由来するという説。永井豪の漫画『ハレンチ学園』(1968年以降)は「エッチ」の再流行に影響を与えましたが、語源とは言えません。

3. その他の説：
[キス]、[性行為]の前段階の行為を指したという説。
自慰(G)の後、愛(I)に繋がることからHとしたという説。
女の子(girl)の後に続くことからHとしたという説。
erotic(エロチック)からの連想説。
「助平だわ」を逆に読んだ「和田平助」のイニシャルという説。
* (H)の文字が性交中の男女の姿に見えるという説。

英語圏での用法

英語圏、特にアメリカでは、「エッチ」(ecchi) は、日本の漫画、アニメ、ゲーム作品における性的な描写を含む作品を指します。ヌードやセミ[[ヌード]]などの描写を含むものの、露骨な性行為の描写は含まない作品に用いられます。露骨な性描写を含む作品は「ヘンタイ」(hentai) と区別して呼ばれます。

まとめ

「エッチ(H)」は、長い歴史を持つ日本語の俗語で、その語源は多様な説が存在します。時代や文脈によって意味合いも変化しており、現在では性行為を婉曲的に表現する場合にも広く用いられています。英語圏では、日本のアニメや漫画作品における性的な描写を指す言葉として用いられるなど、国際的な広がりも見せています。 この多様な解釈こそが、「エッチ」という単語の興味深い一面と言えるでしょう。

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