エットーレ・ポッツォーリ国際ピアノコンクール

イタリアで開催される権威ある国際ピアノコンクール、「国際ピアノコンクール’’エットレ・ポッツォーリ’’」は、1959年にその歴史をスタートさせました。イタリア・ロンバルディア州のセリアーテ市を舞台に開かれ、世界中の若手ピアニストにとって重要なキャリア形成の場の一つです。コンクール名に冠されたエットレ・ポッツォーリは、音楽教育家・作曲家として知られ、特にその練習曲は現代でも広く使われています。

このコンクールの最も顕著な特徴は、その極めて厳格な審査基準にあります。特に第一位の選出においては、妥協を許しません。このため、真に卓越した演奏家が現れない限り、最高位である第一位に「該当者なし」とする判断がしばしば下されます。過去の開催におけるこの傾向は、本コンクールの芸術的価値への高いこだわりを明確に示しており、受賞の価値を一層高めています。

課題曲には、エットレ・ポッツォーリ自身の練習曲が必須で含まれています。これはコンクールの独自性を保つ要素です。一方、近代音楽以降のレパートリーが必修ではないため、幅広い年代、特に10代の若手ピアニストも参加しやすい環境が整っています。

使用されるピアノにも特長があり、予選から本選まで全てのステージで、イタリアが誇る高級ピアノメーカー、Fazioli社製のフルコンサートグランドピアノが使用されます。最高峰の楽器で演奏できる機会は、参加者にとって大きな魅力であり、コンクールの格式を高めています。

ポッツォーリ国際ピアノコンクールは、2023年に国際音楽コンクール世界連盟（WCIMC）に正式加盟し、その国際的な地位を確固たるものとしました。これは、世界の主要な音楽コンクールの一つとして認められた証です。

コンクールの歴史を彩る受賞者の中では、第一回（1959年）の優勝者であるマウリツィオ・ポリーニが特に有名です。彼はこの優勝を足がかりに世界的なキャリアを築きました。また、日本人としては1987年に東誠三氏、2015年には沼沢淑音氏が第一位に輝いています（沼沢氏はカナダのアナスタシア・リジコフ氏と同着）。しかし、前述の厳格な審査基準のため、第一位が選出されなかった回が非常に多いのもこのコンクールの特徴です。特に近年では、2017年、2021年、2023年と3回連続で第一位該当者なしという異例の結果となっています。過去の「該当者なし」の年は、以下の通りです。

1967年
1991年
1995年
1997年
2001年
2003年
2017年
2021年
* 2023年

ポッツォーリ国際ピアノコンクールは、その長い歴史と独自の厳しい基準により、世界のピアノ界において特別な存在感を放っています。エットレ・ポッツォーリ作品の継承、使用楽器へのこだわり、そしてWCIMCへの加盟は、その権威と重要性を示しています。この難関に挑むことは、若手ピアニストにとって自身の芸術性を証明する大きな機会であり、彼らの成長とキャリアにおいて重要なステップとなっています。

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