エティエンヌ・ピエール・ヴァントナ

エティエンヌ・ピエール・ヴァントナ（Étienne Pierre Ventenat, 1757年3月1日 - 1808年8月13日）は、フランスの著名な植物学者です。彼は牧師としてのキャリアから一転、植物学の世界へと足を踏み入れ、その後の研究活動で多大な貢献をしました。

生涯

ヴァントナはリモージュで生まれました。当初は牧師として活動し、サント＝ジュヌヴィエーヴ図書館の館長も務めていました。しかし、イギリスへの旅行が彼の人生を大きく変えることになります。イギリスの植物園や植物学の発展に触れた彼は、植物学研究に強い興味を抱くようになりました。フランス革命後、彼は牧師を辞め、植物学者シャルル＝ルイ・レリティエ・ドゥ・ブリュテルと共に研究を始めました。

1792年、ヴァントナはいくつかの論文を発表しました。1794年には、ソフィー・デュピュイの図版を伴った著書「植物学の原理」（Principes de Botanique）を出版しましたが、その内容に満足できず、全てを買い戻して廃棄しようとしたという逸話が残っています。1795年には、再建されたフランス科学アカデミー（Institut national des sciences et des arts）の植物学部門の会員に選出されました。

1798年には、アントワーヌ・ローラン・ド・ジュシューの「植物の属」（Genera plantarum）の翻訳に、植物の利用法と来歴に関する記述を加えた「ジュシューの方法による植物一覧」（tableau du végétal selon la méthode de règne Jussieu）を出版しました。これにより、彼の植物学における知識と理解の深さを示すとともに、当時の植物分類学の発展に貢献しました。

主な著作と業績

ヴァントナの著書の中で特筆すべきは、美しい図版を伴った植物図鑑です。園芸家ジャック・フィリップ・マルタン・セルスの収集した植物を、ピエール＝ジョゼフ・ルドゥーテが図版を描いて紹介した「J-Mセレスの庭園で栽培された新しく珍しい植物」（Description des plantes nouvelles et peu connues, cultivées dans le jardin de J.-M. Cels）は、彼の著作の中でも特に美しい作品として知られています。また、ナポレオン・ボナパルトの最初の妻ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネが世界中から集め、マルメゾン城の温室で育てた植物を紹介した「マルメゾンの庭園」（Jardin de la Malmaison）も、ルドゥーテやフランソワ・ノエル・セリエルの銅版画によってその美しさが際立っています。

ヴァントナは、菌類学者ピエール・ビュイヤールの著作「フランスのキノコ誌」（Histoire des champignons de la France）の編纂も続け、その学術的な貢献も多岐にわたります。

弟の存在

彼の弟ルイ・ヴァントナも博物学者として活躍しました。ルイは、ラ・ペルーズ伯ジャン＝フランソワ・ド・ガローの捜索のために派遣されたアントワーヌ・ブリュニー・ダントルカストーの太平洋探検航海に、船上牧師兼博物学者として同行しています。兄弟揃って博物学に貢献したことは特筆すべきでしょう。

著作一覧

Description des plantes nouvelles et peu connues, cultivées dans le jardin de J.-M. Cels, 1799
Le Jardin de la Malmaison, 1803
* Decas Generum Novorum, 1808


エティエンヌ・ピエール・ヴァントナは、その生涯を通じて、植物学の発展に大きく貢献した人物です。彼の著作は、科学的な価値だけでなく、芸術的な美しさも兼ね備えており、後世の植物学者や愛好家たちに大きな影響を与え続けています。

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