エドゥアルト・ブフナー

エドゥアルト・ブフナー：発酵研究のパイオニア

エドゥアルト・ブフナー（1860年5月20日-1917年8月13日）は、ドイツの化学者であり、発酵研究における画期的な発見で知られています。彼の業績は、生化学の発展に多大な影響を与え、1907年のノーベル化学賞受賞に繋がりました。本稿では、ブフナーの生涯と、彼の研究がもたらした革新的な成果について詳しく見ていきます。

生い立ちと初期の研究

ブフナーは、ミュンヘンで医師と法医学の講師を務めていた父親のもとに生まれました。彼の兄、ハンス・ブフナーは後に著名な細菌学者となりました。ブフナー自身は、ミュンヘンの植物学研究所で、化学ではアドルフ・フォン・バイヤー、植物学ではカール・ネーゲリの下で研究を始めました。その後、エアランゲン大学でオットー・フィッシャーと共に研究を行い、1888年にミュンヘン大学から博士号を取得しています。

初期の研究では、1885年にテオドール・クルチウスと共にブフナー反応を発見しました。これは、ジアゾエステルとベンゼンの反応によってベンゼン環が拡大するという重要な有機化学反応です。

発酵研究とノーベル賞

ブフナーの最も重要な業績は、発酵に関する研究です。1896年、彼は兄ハンスの抗毒素研究に関連した予備実験として、酵母細胞をすりつぶして濾過し、ショ糖を加えたところ、驚くべきことに発酵（二酸化炭素の発生）が観察されました。顕微鏡観察では、生きた酵母細胞は全く存在せず、ブフナーは酵母細胞が生成する何らかの物質が、発酵を触媒していることを突き止めました。彼はこの物質を「チマーゼ」と命名し、これは後に酵素と呼ばれるようになります。

この発見は、それまでの「生気説」を大きく揺るがすものでした。生気説は、生命現象は生きた細胞内でのみ起こるとする考え方でしたが、ブフナーの実験は、生きた細胞がなくても発酵が起こることを示し、生化学における新しい地平を開きました。この画期的な発見により、彼は1907年にノーベル化学賞を受賞しました。

後半生と没落

ブフナーは、チュービンゲン大学助教授、ベルリン農業大学教授、ブレスロウ大学教授、ヴュルツブルク大学教授を歴任しました。1905年にはリービッヒ・メダルを受賞しており、彼の研究の価値は広く認められていました。

私生活では、1900年にロッテ・シュタールと結婚しました。しかし、第一次世界大戦の勃発により、彼は少佐としてルーマニア戦線に赴き、1917年8月11日、マラシェシュティの戦いで砲弾の破片を受け重傷を負い、2日後に死去しました。わずか57歳でした。彼の死は、科学界に大きな悲しみをもたらしました。

ブフナー漏斗と誤解

ブフナー漏斗は、彼の発明と誤解されることがありますが、実際には別の化学者エルンスト・ビューヒナーが考案したものです。

まとめ

エドゥアルト・ブフナーの功績は、発酵の化学的解明にとどまりません。彼の研究は、生化学という学問分野の確立に大きく貢献し、現代の生化学研究の礎を築きました。彼の突然の死は惜しまれましたが、彼の残した業績は、今もなお科学界に大きな影響を与え続けています。彼の業績は、数々の論文や、ノーベルレクチャーとして後世に残されています。

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