エドゥアルド・トゥビン

エドゥアルド・トゥビン（Eduard Tubin）は、1905年6月18日に現在のエストニアに生まれ、1982年11月17日にこの世を去った、同国を代表する作曲家であり指揮者でもあります。

経歴

トゥビンはエストニアのカラステで生を受けました。しかし、彼の音楽家としてのキャリアは、祖国の激動の歴史と深く結びついています。1944年、エストニアがソビエト連邦によって占領されるという状況下、彼は故国を離れてスウェーデンへの亡命を決断します。その後、彼は生涯を閉じるまで、スウェーデンの首都ストックホルムを拠点に創作活動と演奏活動を続けました。

指揮者としては、母国のみならず国際的な舞台でもタクトを振っており、フィラデルフィア管弦楽団やイギリス室内管弦楽団といった著名なオーケストラとも共演しています。彼の同僚指揮者には、同郷で後にトゥビンの交響曲全集を録音することになるネーメ・ヤルヴィをはじめ、エドゥアルド・マータ、エンリケ・バティス、アンタル・ドラティといった顔ぶれが名を連ねています。

音楽作品と様式

トゥビンの創作の中核をなすのは、完成された10曲の交響曲群であり、未完に終わった第11番も存在する彼の主要なレパートリーです。特に初期の出世作としては、バレエ音楽「クラット」（「悪鬼」の意）が挙げられます。その他にも、彼は多岐にわたるジャンルで作品を残しています。例えば、「弦楽合奏のための音楽」のような管弦楽作品、2つのヴァイオリン協奏曲、バラライカ協奏曲、コントラバス協奏曲といった協奏曲、そして2つのオペラ、さらには「斃れた兵士たちへの鎮魂歌」のような声楽を含む作品など、その創作の幅は非常に広いです。

トゥビンの音楽様式は、彼の人生における大きな変化、特に亡命という経験を経て変貌を遂げました。初期の作品、例えば「エストニアの動機によるシンフォニエッタ」などに見られるように、彼は故郷エストニアの豊かな民俗音楽から強い影響を受けていました。しかし、母国がソ連に支配され、望まない亡命生活が始まってからは、初期に見られたような国民楽派的な色彩は薄れ、より普遍的で国際的な響きを持つ音楽へとその筆致を変化させていきました。この時期の作品には、時に深い怒りや内省的な感情が込められていると評されます。

作曲様式の変化は、特に交響曲第6番の作曲時期に顕著になったとされています。この頃から、和声はより鋭角的な響きを持つようになり、全体的に複雑さと緊張感が増しました。例えば、交響曲第7番の終楽章は、基本的な調性感を保ちながらも、12音による主題を積極的に取り入れるなど、先進的な手法も試みています。彼の交響曲には、内容を示唆する副題を持つものもいくつかあります。交響曲第2番には「伝説的」、交響曲第4番には「叙情的交響曲」（Sinfonia lirica）、そして交響曲第9番には「単純な交響曲」（Sinfonia semplice）という副題が付されています。

評価と現代における受容

トゥビンの音楽は、その質の高さにもかかわらず、国際的な知名度という点では、必ずしも広く知られているとは言えない状況にあります。エストニア本国では、彼を「エストニアが生んだ最大の作曲家」として高く評価し、その業績を讃えています。しかし、彼の創作活動の大半は亡命先のスウェーデンで行われました。スウェーデンでの長きにわたる活動にもかかわらず、彼の音楽が正当な評価や、大家としての相応しい注目を集める機会は、必ずしも十分ではなかったとも言われています。

近年、彼の作品に対する関心は徐々に高まっています。多くの作品が録音されており、特に彼のライフワークである交響曲全集は、ネーメ・ヤルヴィ指揮によるものと、アルヴォ・ヴォルメル指揮によるものの二種類が存在します。また、生誕100周年にあたる2005年には、タリン市において記念音楽祭が盛大に催されました。この音楽祭では、彼の代表的な交響曲はもちろんのこと、ピアノ曲や室内楽曲など、幅広いジャンルの作品が演奏され、改めてその音楽の魅力が再認識される機会となりました。

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