エドウィン・アームストロング

エドウィン・ハワード・アームストロング

エドウィン・ハワード・アームストロング（Edwin Howard Armstrong, 1890年12月18日 - 1954年1月31日）は、アメリカの電気工学研究者、発明家であり、特に周波数変調（FM）の発明者として広く知られています。コロンビア大学で電気工学の学士号を取得後、同大学で長年にわたり研究を続け、数々の画期的な発明を生み出しました。

生い立ちと初期のキャリア

ニューヨーク市で生まれたアームストロングは、幼い頃から電気や機械に強い興味を示しました。特に無線[[通信]]に魅了され、自宅の裏庭に無線アンテナを設置するほどでした。コロンビア大学では電気工学を専攻し、1914年には学生時代に再生回路の特許を取得しました。その後もスーパーヘテロダイン方式、超再生回路、そして周波数変調（FM）など、無線技術における重要な発明を次々と成し遂げました。

第一次世界大戦中には、アメリカ陸軍通信隊の大尉としてパリに派遣され、陸軍の無線[[通信]]システムの構築に貢献しました。また、二度の世界大戦において、自身が持つ特許を米軍に無償で提供するなど、愛国者としても知られています。

技術者としての特異性

アームストロングは、技術者としては珍しく、企業に雇用されることなく、独立して研究開発を行いました。自身の特許を完全に所有し、既成概念に捉われず、常に独自の視点を持って研究に取り組む姿勢を貫きました。

主な業績と特許紛争

アームストロングの最も重要な発明の一つである再生回路は、正帰還を利用した増幅回路であり、当時の真空管が高価であった時代において、画期的な発明でした。この回路によって、無線信号をスピーカーで聞けるほどに増幅することが可能となりました。また、彼はスーパーヘテロダイン技術を開発し、無線信号の混信を大幅に軽減させ、選局能力を向上させました。

アームストロングの業績の中で最もよく知られているのが周波数変調（FM）です。RCAのデイヴィッド・サーノフの依頼で、無線受信における雑音を除去する方法として開発されました。しかし、FMがRCAの得意とするAMラジオと互換性がないことが判明すると、サーノフはFMを脅威とみなし、その後の支援を打ち切りました。アームストロングの特許は度重なる訴訟の対象となり、特許紛争に巻き込まれました。

特に、再生回路の特許をめぐるリー・ド・フォレストとの争いは、長年にわたり法廷闘争が繰り広げられました。最終的に、裁判所はフォレストの特許を有効としましたが、現在ではこの判断は技術的な誤解に基づいていたと考えられています。

FMラジオの開発と挫折

アームストロングは、再生回路の特許問題に直面しながらも、FMラジオの開発に尽力しました。コロンビア大学の研究室で、広帯域周波数変調（FM）を生み出しました。FMはAMに比べて音質が優れ、雑音が少ないという特徴を持っていました。しかし、RCAはFM技術の特許購入を拒否し、アームストロング自身が自費で最初のFMラジオ局を設立しました。その後も、RCAはFMラジオの普及を妨害しようと画策し、周波数帯を変更させたり、特許を主張したりしました。

私生活と悲劇的な結末

アームストロングは、1922年にデイヴィッド・サーノフの秘書だったマリオン・マキニスと結婚しました。結婚前には、マリオンに世界初のポータブルラジオを贈ったという逸話も残っています。しかし、RCAとの特許紛争はアームストロングの財産を奪い、精神的にも疲弊させました。1954年、アームストロングは自ら命を絶ち、その生涯を終えました。

後世への影響

アームストロングの死後、FMラジオは徐々に普及し、現代社会において重要な役割を果たしています。FMステレオ放送の開始や、AMラジオとの差別化政策などがFMラジオの普及を後押ししました。また、アームストロングのFMシステムは、NASAのアポロ計画の宇宙飛行士との通信にも使用されました。

日本での影響

日本でも、大正末期から昭和初期にかけて、アームストロングは無線技術の先駆者として知られていました。当時の無線雑誌では、彼の発明や業績が紹介され、一種のヒーローのように扱われていました。

栄誉

アームストロングは、その功績から数々の賞や栄誉を受けています。IEEE栄誉賞、レジオンドヌール勲章、フランクリン・メダル、エジソン賞などを受賞し、発明者の殿堂入りも果たしました。また、彼がFMの開発を行ったコロンビア大学の Philosophy Hall は、アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されています。

特許

アームストロングは生涯に42の特許を取得しました。主な特許には、再生回路、スーパーヘテロダイン、広帯域FMなどが含まれます。

アームストロングの生涯は、技術革新の光と影、そして発明家の悲哀を象徴しています。彼の残した技術は、現代の無線[[通信]]技術の基礎となり、私たちの生活を支え続けています。

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