エドラダワー蒸留所

エドラダワー蒸留所：伝統と革新が息づくスコッチウイスキーの聖地

エドラダワー蒸留所は、スコットランドのハイランド地方に位置する、ひっそりとした中に佇む蒸留所です。かつてはスコッチウイスキー最小の蒸留所として知られていましたが、近年生産規模を拡大し、伝統を守りながらも新たな挑戦を続けています。その歴史、製造、そして製品について深く掘り下げていきましょう。

歴史：密造から観光名所へ

エドラダワーの歴史は1823年、物品税法が施行された頃の密造に遡ります。1825年に合法的な蒸留所として、近隣の農家たちがアソール公爵の領地を借りて「グレンフォレス蒸留所」として始まりました。1837年にジェームズ・スコットとダンカン・スチュワートが経営を引き継ぎ、「エドラダワー」と改名されました。その語源はゲール語で「スコットランド王エドレッドの小川」または「ふたつの小川の間」とされています。

その後、所有者は何度か変わり、1933年にはアメリカのJ・G・ターニー・アンド・サンズ社傘下のウィリアム・ホワイトリー社に買収され、ブレンデッドウイスキー「キングス・ランサム」などの原酒として使用されました。「キングス・ランサム」は当時、世界で最も高価なウイスキーとして知られていました。

1982年には、フランスのペルノ・リカール傘下のキャンベル・ディスティラーズ社に買収され、観光客を受け入れる方針が確立されました。2002年には、インディペンデント・ボトラーのシグナトリー・ヴィンテージに買収され、元ラフロイグ蒸溜所長のイアン・ヘンダーソンをマネージャーとして迎え、生産方針を大きく転換。2003年にはヘビリーピーテッドタイプの「バレッヒェン」の生産を開始し、2018年には第2蒸留所を開設し、生産量を大幅に増加させました。

製造：伝統的な手作業と最新技術の融合

エドラダワーは、2018年の第2蒸留所設立まで、スコッチウイスキー最小の蒸留所として知られていました。現在でも、糖化後の麦芽の残りを手作業でかき出すなど、多くの工程が手作業で行われています。

かつては3人の職人がすべての工程を担当し、年間生産量はわずか9万リットルでしたが、2018年以降は26万リットルに増加しました。

製麦は1990年に廃止され、現在は麦芽業者から調達しています。「エドラダワー」にはピートを使用しない麦芽を、「バレッヒェン」にはフェノール値50ppmのピートを焚いた麦芽を使用しています。

仕込みにはベンヴラッキー山の泉水を使用し、麦芽は1回あたり1.1トン。マッシュタンは旧式のプラウ&レイキを使用し、麦汁冷却装置にはモートン式のウォーツクーラーを使用しています。現在稼働しているのは2009年に製造されたレプリカですが、モートン式が現存するのはエドラダワーのみです。ウォッシュバックはオレゴンパイン製で、8基あります。

蒸留は、第1・第2蒸留所にそれぞれ2基ずつ、計4基のポットスチルで行われます。初留器はストレートヘッド型、再留器はバルジ型で、蒸気加熱式。冷却には伝統的なワームタブを使用し、時間をかけて液化させることで、ヘビーな味わいのスピリッツを生み出しています。蒸留器は非常に小さく、再留器は法律で認められる最小サイズです。

熟成庫は2008年、2009年に増築され、エドラダワーとシグナトリーの原酒が熟成されています。瓶詰めは敷地内の共通設備で行われています。

製品：個性豊かなシングルモルト

主力製品は蒸留所名を冠した「エドラダワー」シリーズで、その他にヘビリーピーテッドタイプの「バレッヒェン」があります。「バレッヒェン」は、かつてエドラダワー近郊に存在した蒸留所の名前が由来です。

かつてエドラダワーの原酒が使用されていたブレンデッドウイスキーには、「ハウス・オブ・ローズ」や「キングス・ランサム」がありました。特に「キングス・ランサム」は、ブレンド後に樽詰めし、世界一周する客船に積み込んでマリッジを行うという独特な製法で知られていました。

評価と観光

評論家のマイケル・ジャクソンは、エドラダワーのハウススタイルを「スパイシー、ミントっぽい、クリーミー。食後酒」と評し、土屋守は「ハチミツのように甘い香り、クリーミーでとろけるような舌触り」と評しています。

風光明媚な立地と建物から、観光地としても人気が高く、年間10万人が訪れます。ビジターセンターの売上は年間100万ポンドに達し、グレンタレット蒸留所に次いで2番目の多さです。

エドラダワー蒸留所は、スコッチウイスキーの伝統を守りながらも、革新的な試みを取り入れ、個性豊かなウイスキーを生み出し続けています。その美しい景観と独特の雰囲気を求めて、ぜひ一度訪れてみてください。

もう一度検索