ラフロイグ蒸溜所

ラフロイグ蒸留所：アイラ島の個性派シングルモルト

スコットランド西海岸沖のアイラ島に佇むラフロイグ蒸留所は、サントリーグローバルスピリッツが所有するシングルモルトウイスキーの生産拠点です。ゲール語で「広い湾のそばの美しい窪地」を意味するその名にふさわしく、独特の強烈なピート（泥炭）香を放つウイスキーを生み出しています。その力強い個性は、愛好家から絶大な支持を受ける一方、独特の風味ゆえに好みが分かれる一面も持ち合わせています。

歴史：島と共に歩んだ200年以上の軌跡

ラフロイグ蒸留所の歴史は、1815年の設立に遡ります。創業はジョンストン兄弟。彼らは当初牧畜を営んでいましたが、家畜の飼料となる大麦を原料にウイスキーを作り始め、島内で評判を呼びます。やがて蒸留に専念するようになり、ラフロイグ蒸留所が誕生しました。

その後、経営はハンター家に移り、1954年にはイアン・ハンターの遺言により、蒸留所とは無縁だったベッシー・ウィリアムスが所長に就任。彼女はスコッチウイスキー史上初の女性蒸留所所長として、独自のフロアモルティングと生産性向上に成功し、ラフロイグの製造プロセスを確立しました。テネシー産バーボン樽の導入も彼女の功績の一つです。ベッシーの卓越した手腕によって、ラフロイグは現在の名声を築き上げました。

その後、数々の企業の傘下を経て、2014年にはサントリーホールディングスがビーム社を買収。現在ではサントリーグローバルスピリッツを通してラフロイグ蒸留所を所有しています。また、チャールズ3世（当時皇太子）御用達のウイスキーとして、モルトウイスキーで初めて「プリンス・オブ・ウェールズ」の認定を受けたという栄誉も誇ります。

テイスト：強烈なピート香とバーボン樽のハーモニー

ラフロイグは、最も強いフレーバーを持つスコッチウイスキーの一つとして知られています。10年熟成が一般的ですが、15年、さらには希少な30年、40年ものも存在します。熟成にはバーボンウイスキーのファーストフィル樽のみを使用。小さくくびれたポットスチルを用いることで、フェノール値の高い、個性的なウイスキーが造り出されています。

2006年には、100年前のウイスキーのような風味を再現した「ラフロイグ・クォーター・カスク」を発売。小さな樽を使用し、冷却濾過を行わないことで、濃厚なピート香と複雑な味わいを実現しています。

その独特の風味は、海藻、ヨードチンキ、消毒液などに例えられることもありますが、バーボン樽由来の甘さがそれをうまく調和させ、奥行きのある味わいを生み出しています。アメリカ禁酒法時代には、「薬の臭い」と主張して販売していたという逸話も残っています。

テイスティングノーツ：複雑で力強い個性

ラフロイグの個性は、ピートの量、独自のフロアモルティング、そしてサーネイグ・バーン川の水にあります。これらの要素が、海藻やコケを思わせる、強烈なピート香を生み出しています。その強烈な個性ゆえに、愛好家からは「好き嫌いがはっきり分かれる」ウイスキーとしても知られています。

しかし、その複雑で力強い風味は、一度味わうと忘れられない魅力を放ちます。加水することで香りが引き立つとされていますが、ピート香を際立たせるために、あえて少量の水を加える愛好家もいます。

ラインナップとフレンズ・オブ・ラフロイグ・クラブ

ラフロイグは、10年、16年、18年など様々な熟成年数のウイスキーをラインナップしています。また、カスクストレングスやクォーターカスクなど、個性豊かなバリエーションも楽しめます。

1994年には「フレンズ・オブ・ラフロイグ・クラブ」が設立。会員にはアイラ島の土地1平方フィートの終身賃借権が与えられ、会費は一杯のラフロイグです。

ラフロイグは、その歴史、製法、そして個性的な味わいで、世界中のウイスキー愛好家を魅了し続けています。

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