エドワード・アシリング

エドワード・アシリング：亡国の王子、その数奇な運命

エドワード・アシリング（1016年 - 1057年）は、エドマンド2世王とエディス・オブ・イースト・アングリアの息子として生まれました。「亡命者」を意味する「エセリング」の添え名が示すように、彼はその生涯の大部分をイングランド国外で過ごすことを余儀なくされました。

波乱の幼少期と亡命生活

1016年、デーン人の侵略によりイングランドの政情は大きく混乱しました。エドマンド2世王の死後、デンマーク王クヌートがイングランド王位を簒奪し、幼いエドワードとその兄弟エドマンドを大陸へ追放しました。生後間もないエドワードは、クヌート王の密命により殺害されるためにスウェーデンへ送られますが、密かにキエフへと運ばれました。キエフ大公ヤロスラフ1世の妃インゲゲルドはスウェーデン王オーロフの娘であり、このことがエドワードの命を救ったと考えられています。その後、エドワードはハンガリーへと亡命し、長きにわたる異国での生活を送ることになります。

王位継承の希望と突然の死

数十年後、クヌート王の死後、エドワード懺悔王がイングランド王位を継承しますが、後継者不在という問題に直面していました。アングロ・サクソン王朝の血を引くエドワードの存在が明らかになると、懺悔王は彼をイングランドに呼び戻し、王位継承者として迎えようとしました。当時、ハロルド・ゴドウィンソンやノルマンディー公ギヨーム2世といった有力者が王位を狙っており、エドワードはウェセックス家の血統を繋ぐ最後の希望として期待されました。

1057年、エドワードはついにイングランドに帰国を果たしますが、そのわずか2日後に急死してしまいます。死因は明らかにされておらず、暗殺説も囁かれています。ウェセックス家の希望の星は、志半ばでその生涯を閉じたのです。

子孫と歴史への影響

エドワードは、ハンガリー王イシュトヴァーン1世の娘とされるアガサを妻に迎え、3人の子供をもうけました。

エドガー・アシリング: 父に代わって王位継承者に指名されましたが、若すぎたためハロルド・ゴドウィンソンに王位を奪われました。
マーガレット: スコットランド王マルカム3世と結婚し、スコットランド王室に大きな影響を与えました。聖マーガレットとして知られています。
クリスティーナ: 修道女となりました。

エドワード自身はイングランド王位に就くことはありませんでしたが、彼の子孫はイングランドとスコットランドの歴史に深く関わることになります。特に、娘マーガレットを通じて、スコットランド王室にアングロ・サクソンの血が受け継がれ、その後の歴史展開に重要な役割を果たしました。

エドワード・アシリングの生涯は、権力闘争、亡命、そして運命に翻弄された王子の物語として、今もなお語り継がれています。

参考文献
Gabriel Ronay, The lost King of England : the East European adventures of Edward the Exile, Woodbridge, Suffolk ; Wolfeboro, N.H., USA : Boydell Press, 1989, ISBN 0-85115-541-3, pp. 109-121

外部リンク
* Genealogy for Edward the Exile

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