エドワード・プランケット・テイラー

エドワード・プランケット・テイラー：カナダの実業家と競馬界の巨人

エドワード・プランケット・テイラー (1901-1989) は、カナダにおける20世紀を代表する実業家であり、世界的な名馬ノーザンダンサーの生産者としても知られる、極めて多才な人物でした。オタワの裕福な家庭に生まれたテイラーは、第一次世界大戦勃発を機にロンドンに移住しますが、その後カナダに戻り、マッギル大学で機械工学の学位を取得します。しかし、彼の真の才能は工学ではなく、ビジネスの世界にありました。

醸造業からの躍進

大学卒業後、テイラーは当初バス事業や証券会社勤務を経て、家業であったブレイディング醸造所の取締役に就任します。禁酒法撤廃を機に、革新的な経営手腕を発揮。低迷していたオンタリオ州の醸造業界を大胆な買収と合併によって再編し、カナディアン・ブリュワリーズ・コーポレーションという巨大企業を築き上げます。その過程では、資金繰りの工夫や、取引における巧みな駆け引きが光りました。第二次世界大戦中には軍需供給にも携わり、カナダ政府に多大な貢献を果たしました。

アーガス・コーポレーションと多角経営

戦後、テイラーはアーガス・コーポレーションを設立。この投資会社を通じて、カナダの主要企業であるカナディアン・フード・プロダクツ、マッセイ・ハリス、スタンダードケミカルなど数々の企業で経営権を獲得、あるいは重要な地位に就き、カナダ経済界に大きな影響力を持つ存在となります。彼の経営手法は、迅速な意思決定と行動力、そして優れた人脈を活かしたものでした。また、バハマに設立した高級リゾートコミュニティ「ライフォードケイクラブ」は、彼の先見性とビジネスセンスを示す象徴的な存在です。

カナダ競馬界への貢献

テイラーのもう一つの大きな功績は、カナダ競馬界への貢献です。若い頃から競馬に興味を持っていた彼は、コスグレイブ・ステーブルを設立し馬主として活動を開始。その後、生産者、そして競馬場運営にも積極的に関与し、カナダダービーに相当するクイーンズプレート優勝馬を15頭も所有、カナダ年度代表馬も9頭輩出しました。

州内の競馬場を再編、近代的なウッドバイン[[競馬場]]を建設するなど、カナダ競馬界の近代化に尽力します。世界的な名馬セクレタリアトのラストランをウッドバイン[[競馬場]]で実現させたことは、カナダ競馬の国際的な地位向上に大きく貢献しました。さらに、カナダジョッキークラブの創設にも携わり、アメリカサラブレッド競馬協会の会長も務めました。

ノーザンダンサーとウインドフィールズファーム

テイラーは、トロント近郊にウインドフィールズファームを設立。質の高い種牡馬と繁殖牝馬を導入し、徹底した繁殖計画を展開しました。その成果が、カナダ産馬として初めてケンタッキーダービーを制したノーザンダンサーです。ノーザンダンサーは種牡馬としても大成功を収め、その血統は現代競馬に多大なる影響を与え続けています。他にも、ニジンスキーなどの名馬を輩出しました。

後世への影響

テイラーは、晩年まで旺盛な事業活動を続け、カナダ経済界と競馬界に多大な貢献を果たしました。彼の革新的な経営手法、大胆な決断力、そして優れた人脈は、多くの後継者たちに影響を与え続けています。カナダスポーツの殿堂入りを果たした彼の功績は、今日もなお称えられています。彼の名前を冠したE.P.テイラーステークスは、カナダ競馬界における彼の偉業を象徴するレースとして、現在も開催されています。テイラーの生涯は、ビジネスとスポーツの両面で成功を収めた稀有な人物像として、これからも語り継がれていくでしょう。

もう一度検索