エドワード・P・トムスン

エドワード・パルマー・トムスンの生涯と業績

エドワード・パルマー・トムスン（1924年2月3日 - 1993年8月28日）は、イギリスの著名な歴史家、社会主義者、そして平和運動家でした。彼は特に18世紀から19世紀の英国における労働者階級の形成に関する研究で知られています。その最も有名な著作『イングランド労働者階級の形成』は1963年に発表され、多くの学者や一般の読者に影響を与えました。

幼少期と教育

トムスンはオックスフォードでメソジスト宣教会の両親のもとに生まれました。彼はキングズウッド校で教育を受けた後、第二次世界大戦ではイタリアの戦車部隊に従軍しました。その後、ケンブリッジ大学コーパス・クリスティ・カレッジに進学し、そこで共産党に加入します。1946年には、クリストファー・ヒルやエリック・ホブズボームらと共に「共産党歴史家グループ」を結成し、雑誌『過去と現在』を発行し、注目を集めました。

ウィリアム・モリスへの関心

トムスンの初期の代表作であるウィリアム・モリスの伝記は、彼の共産党としての立場が色濃く反映されたもので、モリスのロマン主義から革命家としての視点を掘り下げる内容となっています。この伝記において、彼はモリスの政治的見解や芸術的貢献を精緻に分析し、マルクス主義の初期の形を照らし出しました。

第一次ニューレフトの台頭

1956年、ソ連のスターリン批判が行われた第20回党大会の影響を受け、トムスンは共産党を離脱することになります。その後、彼は自らを「社会主義的ヒューマニスト」と称し、新たな左翼運動である第一次ニューレフトに参加します。この運動は、反核運動や労働党左派への影響を拡大させ、その後、彼は『ニューリーズナー』という雑誌を通じて新しい社会民主主義的な視点を広めました。

『イングランド労働者階級の形成』の功績

1963年に出版された『イングランド労働者階級の形成』は、トムスンの最も影響力ある著作とされ、労働者階級の歴史的な背景を明らかにしました。この作品では、当時の労働者たちの生活や闘争を詳細に描写し、彼らの声を歴史に刻む試みがなされました。「貧しい靴下職人」や「ラッダイト運動」の小作人たちの経験を通じて、彼らの社会的闘争が如何にしてイギリス社会に影響を与えたのかを分析しています。

学術とフリーランス活動

ウォーリック大学を辞職後、トムスンは主にアメリカ合衆国で教職を継続しつつ、フリーランスとしての文章執筆にも力を入れました。彼の著作やエッセイは、『ニューソサエティ』や『ソシアル・レジスター』などのジャーナルに掲載され、広範な影響を持ちました。また、彼は核軍縮運動の重要な知識人となり、政府の核政策に対する批判を展開しました。

平和運動と晩年

1980年代に入ると、トムスンは復活した核軍縮運動における重要な知識人となり、『抗議と生存』というパロディ的パンフレットを発表しました。このパンフレットは反核キャンペーンの活動において重要な役割を果たしました。晩年には、ウィリアム・ブレイクに関する最後の著作『野獣に逆らう証人』を執筆し、ブレイクの反体制的な考え方を探求しました。

私生活

トムスンはドロシー・タワーズと1948年に結婚しました。彼女もまた左翼運動に参加し、バーミンガム大学で歴史学の教授として活躍しました。トムスンの業績は、彼の理論や著作を通じて現在も多くの人々に影響を与え続けています。

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