エドヴァルト・リッツ＝シミグウィ

エドヴァルト・リッツ＝シミグウィ：多才なポーランドの軍人

エドヴァルト・リッツ＝シミグウィ（Edward Rydz-Śmigły, 1886年3月11日 - 1941年12月2日）は、ポーランドの軍人、画家、詩人であり、1939年のポーランド侵攻時のポーランド軍総司令官として知られています。

生涯

リッツ＝シミグウィは、現在のウクライナ領であるオーストリア＝ハンガリー帝国領ブジェジャニ近郊のワプシンで生まれました。彼の家系はドイツ系ポーランド人にルーツを持ち、姓のRydzはドイツ語のRitz（「リヒャルトの息子」の意味）に由来します。元々の姓はリッツでしたが、後に「素早い」という意味のあだ名「シミグウィ」を加えて、リッツ＝シミグウィと改姓しました。

彼はギムナジウム卒業後、クラクフのヤギェウォ大学で哲学と美術史を専攻し、その後クラクフ美術学校（現ヤン・マテイコ美術アカデミー）に進学、ウィーンやミュンヘンにも留学しました。1910年頃には、ウィーンでテレジア士官学校に入学し、歩兵第4連隊で訓練を受けました。1912年に少尉に任官すると、ポーランド人準軍事組織「猟兵連合」の設立に関わります。同年には美術アカデミーを卒業し、その美術的才能は早くから注目されていました。

第一次世界大戦が勃発すると、1914年8月にリッツは応召され、ユゼフ・ピウスツキ率いるポーランド第1旅団に所属し、ヴィスワ川周辺でロシア軍と交戦しました。戦場で急速に出世し、1916年には大佐に昇進。戦火の中でも絵に対する情熱を忘れず、画廊に自身の絵を出展しています。

1917年、ピウスツキが自身の部隊をドイツ・オーストリア軍の一部となることを拒否したため、部隊は強制解散させられ、ピウスツキらはマルデブルク監獄に投獄されました。リッツは健康上の問題で投獄を免れ、ピウスツキの意志を継いでポーランド軍の創設に尽力。1918年10月には、ポーランド共和国臨時委員会戦争大臣に就任しました。

1919年、ポーランド・ソビエト戦争に参加し、ヴィリニュスやダウガフピルスを占領。その後、ラトビア軍の最高指揮官に就任し、ソ連軍からラトガレを奪還。さらに、赤軍第12師団を壊滅させ、キエフを占領しました。ワルシャワの戦いでは中央軍を指揮し、ワルシャワを死守。「ヴィスワの奇跡」と呼ばれる勝利に貢献しました。

戦後、リッツはヴィリニュス方面軍、のちワルシャワ中央軍にて監察総監の地位に就きました。1926年、ピウスツキがクーデター（五月革命）を起こすと、リッツは反乱軍に加わり、政権掌握に貢献。この功績により、1929年に東部方面軍総監に任ぜられました。1935年5月13日、ピウスツキの死去に伴いポーランド軍監察総監に就任し、軍の最高権力者となりました。1936年10月には、ポーランド元帥の称号を得ました。

1939年9月のドイツ軍の侵攻では、最高司令官としてポーランド軍を指揮。ワルシャワの死守とルーマニア橋頭堡での持久を計画しましたが、9月17日にソ連軍が東部国境から侵攻すると、ルーマニアへの脱出を国軍に命じ、自身も政府要人と共にルーマニアへ脱出、抑留されました。

ルーマニア抑留中の10月に一切の公職を辞任し、権限をシコルスキ将軍の在仏ポーランド亡命政府に移譲しましたが、亡命政権には参加しませんでした。1939年12月にはルーマニアを脱出し、1940年10月にはワルシャワに秘密裏に戻り、国内軍の地下運動に参加しました。

1941年12月、ワルシャワで心不全により急死。55歳でした。

参考文献

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