エド・サリヴァン

エドワード・ヴィンセント・サリヴァン（Edward Vincent Sullivan, 1901年 9月28日 - 1974年 10月13日）は、アメリカ合衆国の著名な娯楽作家であり、テレビ司会者として一時代を築いた人物です。特に、1950年代から1960年代にかけて絶大な人気を博した看板番組『エド・サリヴァン・ショー』のホストとして、その名声は今なお語り継がれています。

経歴

ニューヨーク市ハーレムにて、アイルランド系の税関職員を父に持ち、長男として生を受けました。若い頃はボクサーを志した時期もありましたが、後にジャーナリズムの世界へ進みます。スポーツ新聞の記者を経て、ニューヨーク・デイリーニュース紙の劇場コラムニストとして活躍しました。ブロードウェイの舞台裏や当時の有名人たちのゴシップを取り上げた彼のコラムは、多くの読者から高い評価を受けました。また、ラジオ向けの報道原稿執筆も手掛けており、そのキャリアを通じて、文章を書くことと深く関わり続けました。

『エド・サリヴァン・ショー』

テレビが一般家庭に普及し始めた黎明期である1948年、サリヴァンはCBSネットワークから新たなバラエティ番組の司会に抜擢されます。当初『トースト・オブ・ザ・タウン』という番組名でスタートしましたが、1955年9月には自身の名を冠した『エド・サリヴァン・ショー』と改称されました。

ニューヨークのCBSスタジオ50から生放送されたこの番組は、テレビがアメリカにおける主要なエンターテイメント媒体へと成長を遂げた1950年代から1960年代にかけて、国の顔ともいえる存在となりました。エルヴィス・プレスリー、ジェームス・ブラウン、コール・ポーター、ジャクソン5、そしてビートルズやカルメン・ミランダといった、ジャンルや世代を超えた国内外のスーパースターたちが、この番組のステージに立ちました。

特筆すべきは、その画期的なキャスティングです。1964年の公民権法制定以前、人種差別が公然と行われ、有色人種のアーティストが公演を拒否される劇場も少なくありませんでしたが、サリヴァンは積極的にアフリカ系アメリカ人の歌手やグループを番組に招きました。また、まだ無名だった才能を発掘し、アメリカの一般視聴者に紹介する役割も担いました。ビートルズやローリング・ストーンズといったイギリスの人気グループが初めてアメリカのテレビに出演したのも、この番組でのことでした。さらに、海を越えて日本のジャッキー吉川とブルーコメッツやザ・ピーナッツなども招聘し、世界中のエンターテイメントをアメリカに紹介する窓口となりました。

このような、ジャンル、人種、国籍にとらわれない多様な出演者の選定は、サリヴァン自身の保守的な思想と、人種差別への反対、そして先見の明に基づく方針でした。公民権運動の進展など、社会が変化を求める中で、彼の番組は幅広い大衆から強い支持を得ました。これらの功績が称えられ、1967年には番組が放送されていたCBSスタジオ50が『エド・サリヴァン・シアター』と改名されました。

一方で、彼は老若男女を問わない視聴者層に配慮するため、当時のアメリカの一般的な保守層の価値観を番組制作に反映させました。これが、プレスリーの登場時の服装への注文やカメラアングル、ドアーズやローリング・ストーンズの歌詞変更要求など、現代では奇妙に思えるような様々な逸話を生むことにも繋がりました。

しかし、レジャーの多様化やベトナム戦争を経てアメリカ社会全体の価値観が変化するにつれて、保守的な番組構成への飽きが生じ、1971年には視聴率が低迷。CBS上層部の判断により、同年6月6日をもって番組は23年の歴史に幕を下ろしました。サリヴァンはこの決定に激しく反発し、一時CBSとの関係を断ちましたが、1973年に放送された番組25周年記念特番などには出演しています。

人物と評価

司会者としてのサリヴァンは、その無表情さからコメディアンたちに「Great Stone Face（偉大な石顔）」と揶揄されることがありました。また、独特の発音癖も物まねの対象となりました。しかし、批評家の中には「個性を持たないという個性で成功した」「最も普遍的な存在である」と評する者もいました。サリヴァンは批判に対し、簡潔かつ辛辣な返答をすることで知られており、あるコラムニストに向けた「You bitch.」という短い手紙は有名なエピソードとなっています。

彼のテレビエンターテイメントへの貢献は高く評価されており、ハリウッド大通りにある「ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム」にはその名を刻んだ星が設置されています。

最期

長寿番組の終了からわずか3年後の1974年 10月13日、食道癌のため73歳で死去しました。遺体はニューヨーク郊外のハーツデールにあるファーンクリフ墓地に埋葬されています。

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