エニシダ属

エニシダとは：鮮やかな黄色の花を咲かせる植物

エニシダ（学名: Cytisus）は、マメ科エニシダ属に分類される植物の総称です。ヨーロッパや北アフリカ原産で、日本には明治時代に渡来しました。その鮮やかな黄色の花は、春の訪れを告げる風物詩として親しまれています。

エニシダの名前の由来

属名のCytisusは、古代ギリシャ語の「kytisso（クローバー）」に由来すると言われています。一方、和名の「エニシダ」は、スペイン語の「hiniesta（イニエスタ）」が訛ったもの、または近縁種のヒトツバエニシダ属のオランダ語読み「ヘニスタ」に由来するという説がありますが、定かではありません。

エニシダの分布と形態

エニシダ属の植物は、アジア西部からヨーロッパ、アフリカの温暖な地域に約30種が分布しています。落葉または常緑の低木で、樹高は2～4m程度まで成長します。枝はよく分枝し、葉は単葉または3出複葉で、細い形状をしています。花は、枝の葉腋に総状花序を形成し、多数の小さな花を咲かせます。花の色は黄色が基本ですが、白花や、交配種では赤、ピンク、オレンジなどの花色も存在します。果実は豆果で、熟すと黒色になります。

エニシダの主な種類

エニシダ (Cytisus scoparius)

イベリア半島原産の常緑または半常緑の低木。高さは約1mで、枝は細く、ほうき状に分枝します。春に黄色の花を咲かせ、果実は熟すと黒くなります。全草にアルカロイドを含み有毒です。英名では「スコッチ・ブルーム」と呼ばれます。
*ヒメエニシダ (Cytisus × spachianus)

地中海沿岸原産の低木。春に開花し、鉢植えとして流通しているエニシダの多くはこの品種です。

エニシダの栽培方法

エニシダは、日当たりと水はけの良い場所を好みます。種から育てる場合は、種皮が硬いため、播種前に熱湯に浸すなどの処理を行うと発芽しやすくなります。挿し木での繁殖は難しいですが、実生であれば比較的容易に育てられます。

播種：10月に採取した種子を保存し、翌年の3月中旬～下旬に播種します。播種後、10～20日で発芽します。
移植：一度ポットに移植し、庭に1m間隔で定植します。大きな苗の移植は避けてください。
管理：春から秋にかけて、日当たりの良い場所で管理します。水はけの良い、やや乾燥気味の弱アルカリ性土壌が適しています。

エニシダの用途

西洋では、エニシダの枝を束ねて箒として利用していました。また、魔女が空を飛ぶ際に跨る箒も、エニシダの枝でできているという伝説があります。日本では、枝先の帯化した「石化エニシダ」が生け花などの材料として利用されています。

エニシダと文化

エニシダはその美しい花姿から、俳句の世界では夏の季語として用いられています。また、イングランドのプランタジネット朝の王朝名は、エニシダを意味する「planta genista」に由来するとされています。

エニシダは、その美しい花と独特な文化的な背景から、多くの人々に愛されてきた植物です。庭木として、または生け花として、エニシダの魅力を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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