豆果

豆果（莢果）とは

豆果（とうか）（莢果（きょうか））とは、マメ科植物に特有の果実であり、その多くは1枚の心皮から形成されます。成熟すると、腹縫線と背縫線に沿って2つに裂開するのが基本的な特徴です。

豆果の構造

豆果は、1枚の心皮が発達してできた果実であり、通常は乾燥した果皮（莢）を持ちます。内部には複数の種子が腹縫線に沿って並んでいるのが一般的です。しかし、例外的に種子が1つしかないものや、隔膜によって2室に分かれているものも存在します。また、果皮が多肉質であるものも見られます。

豆果の種類と特徴

基本的な豆果: 腹縫線と背縫線の両方で裂開し、2片に分かれるタイプ。多くのマメ科植物に見られます。
裂開しない豆果: シャジクソウ属、ハギ属、エンジュ、イナゴマメのように、成熟しても裂開しないタイプ。
腹縫線のみで裂開する豆果: ジャケツイバラやタンキリマメのように、片側のみで裂開するタイプ。
節果: オジギソウやヌスビトハギのように、豆果と同様の構造を持ちながらも、裂開せずに種子を含む単位で分節するタイプ。

豆果の形成

ラッカセイのように、花が受精後に子房の柄が伸びて地中で豆果となるものや、地中に閉鎖花をつけ、そこから豆果となるものもあります。また、ヤブマメのように、地上と地中の両方で豆果をつける種類も存在します。

豆果の種子散布

豆果は、様々な方法で種子を散布します。

自動散布: 成熟すると莢がねじれて裂開し、種子をはじき飛ばす方法。カラスノエンドウやフジに見られます。
風散布: 種子を放出せずに、莢ごと風で飛ばす方法。ハリエンジュやエニシダに見られます。
付着散布: 果皮のカギ状の毛によって、動物に付着して運ばれる方法。ヌスビトハギやフジカンゾウに見られます。
被食散布: 果皮が多肉質で、動物に食べられて種子が運ばれる方法。エンジュに見られます。
擬態散布: 赤と黒のコントラストで鳥を誘い、種子を運ばせる方法。トキリマメやノササゲに見られます。
アリ散布: 種子にアリが好む物質を付着させ、運ばせる方法。アカシア属、ネムノキ属、エニシダ属に見られます。
水流散布: 果皮がコルク質で水に浮き、水流に乗せて運ぶ方法。クサネムに見られます。

豆果と人間

豆果は、人間生活においても重要な役割を果たしています。

食用: インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ダイズ、アズキ、ラッカセイなど、多くのマメ科植物の種子（豆）が食用として利用されています。また、インゲンマメやエンドウなどでは、若い果皮も食用とされます。
* 染料: スオウやジャケツイバラの豆果から得られる色素は、染料として利用されます。

まとめ

豆果は、マメ科植物特有の多様な形態と生態を持つ果実であり、その種子散布の方法も様々です。また、人間生活においても、食料や染料として重要な役割を果たしています。このユニークな果実の構造と生態を理解することは、植物の世界への理解を深める上で非常に重要です。

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