エヌモン・ゴーティエ

エヌモン・ゴーティエ（Ennemond Gaultier）は、およそ1575年に生まれ、1651年12月17日にその生涯を閉じたフランスの音楽家です。彼は特にリュートの演奏と作曲で知られ、17世紀フランスにおけるリュート楽派を代表する巨匠の一人とされています。

同時代には同姓同名のリュート奏者が複数存在したため、区別のために「老・ゴーティエ」（Gaultier le Vieux）あるいは出身地にちなんで「リヨンのゴーティエ」（Gaultier de Lyon）とも称されました。

ゴーティエのキャリアはリヨンの地で始まりましたが、1620年頃にパリへと移り、当時のフランス王妃マリー・ド・メディシスの従者として宮廷リュート奏者の職に就きました。この頃、彼はリュート奏者ルネ・メッサンジョーに師事していたと考えられています。宮廷での活動を経て、1631年にはネーヴェの地に移り、そこで晩年を過ごし隠居しました。

彼の作品については、記録の少なさや同時代の他の「ゴーティエ」との混同により、作者を特定することが難しい場合があります。例えば、彼の従兄弟にあたるドニ・ゴーティエが1669年に出版したリュート曲集には、エヌモン・ゴーティエの作品が含まれているとされていますが、どちらのゴーティエによるものかを明確に判別することは容易ではありません。このように作者が曖昧なケースは少なくありませんが、二人のゴーティエが残した作品群は、当時のリュート音楽、そして後世のリュート演奏や作曲法に計り知れない影響を与えました。

エヌモン・ゴーティエの作品として特に知られているものには、師であるルネ・メッサンジョーの死を悼んで作曲されたとされるアルマンド形式の『メッサンジョーに捧げるトンボー』（Le tombeau de Mezangeau）があります。この作品は、「トンボー」という形式の最初期の例の一つと考えられており、後の作曲家たちに大きな影響を与えました。その他にも、活気のあるクーラントである『美しき殺し屋』（La Belle Homicide）や、軽快なリズムを持つ『老ゴーティエのカナリー』（Les Canaries du Vieux Gaultier）などが、彼の代表作として挙げられます。

エヌモン・ゴーティエは、その高度な演奏技術と洗練された作曲スタイルによって、17世紀フランスのリュート音楽を彩った重要な人物です。彼の作品は、今日でも当時のリュート音楽の豊かさや奥深さを私たちに伝えています。

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