アルマンド

アルマンド（仏：allemande、「ドイツ風」の意）は、バロック音楽の時代に器楽曲形式として発展した舞曲の一種です。組曲の第一曲、または前奏曲に続く第二曲として採用されることが多く、その優雅で落ち着いた雰囲気が特徴です。

歴史

アルマンドの起源は16世紀のフランスに遡ります。当時のアルマンドは、「地面に足をつけた中庸の遅さ」（トワノ・アルボ「オルケゾグラフィ」1589年）を持つ2拍子のダンスでした。男女が列を作って進みながら踊るスタイルで、パヴァーヌに似ていますが、それよりもやや速いテンポでした。この時代のアルマンドは、アルマンド本体、retourと呼ばれる同じリズムの部分、そして3拍子で構成されるクーラントという部分で構成されていました。アルマンドはイタリアにも伝わり、同様にアルマンド本体と3拍子のコレンテやサルタレロなどが組み合わされて演奏されました。

17世紀に入ると、作曲家たちはアルマンドをより自由な発想で捉え、テンポに自由度を持たせた4拍子の舞曲として作曲するようになりました。対位法が取り入れられたり、テンポの幅が広げられたりと、多様な表現が試みられました。バロック音楽の作曲家たちは、それぞれの個性や音楽的なアイデアをアルマンドに込めることで、その形式を豊かに発展させたのです。

18世紀後期には、拍子が3分割されるアルマンドも登場しました。ただし、アルマンドの拍子の3分割は、その起源からも見られる要素です。この3分割の要素は、ワルツの前身とも考えることができます。しかし、ワルツの起源は、ポワトゥーと呼ばれるブランルの一種から派生したマズルカであるという説が有力です。アルマンドとワルツは、そのリズム構造において共通点を持つものの、起源や発展の経緯は異なると考えられています。

アルマンドは、バロック音楽の重要な構成要素として、多くの作曲家によって愛されました。その形式は時代とともに変化し、多様な表現を生み出してきました。組曲の中で、アルマンドはしばしば他の舞曲と組み合わされ、全体の調和と多様性を高める役割を果たしました。アルマンドを理解することは、バロック音楽の全体像を把握する上で不可欠と言えるでしょう。

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