エネルホダル包囲戦

エネルホダル包囲戦：ザポリージャ原子力発電所を巡る攻防

エネルホダル包囲戦は、2022年2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻の南部戦線で発生しました。この戦いの焦点となったのは、ザポリージャ州に位置するエネルホダル市と、そこに立地するザポリージャ原子力発電所です。この発電所はウクライナの原子力発電量の約半分を担っており、近隣の火力発電所と合わせて、国内総電力の5分の1以上を発電する重要な施設です。

戦闘の経過

ロシア軍の最初の侵攻と住民の抵抗

2月28日、ロシア国防省はエネルホダル市とザポリージャ原子力発電所を占領したと発表しました。しかし、エネルホダル市長のドミトロ・オルロフはこれを否定。市民は発電所への道と都市の入口を封鎖し、ロシア軍の侵入を阻止しました。この初期段階での市民の抵抗は、ロシア軍の進撃を一時的に食い止める上で重要な役割を果たしました。

ロシア軍の包囲と住民の再度の抵抗

3月1日、ロシア軍はエネルホダル市を包囲し、午後には市内に向けて進軍を開始しました。食料の確保が困難になる中、市民は再び抵抗を開始。道路を封鎖し、ウクライナの旗を掲げ、ごみ収集車をバリケードとして利用しました。3月2日には、ロシア兵が市民に手榴弾を投げたとされる事件も発生し、2人が負傷しました。夕方には、200人の住民と発電所労働者が抗議に参加し、ロシア軍の侵入を阻止しようとしました。

発電所への攻撃と占領

3月3日、ロシア軍はザポリージャ原子力発電所への攻撃を開始しました。砲撃により、管理棟と6つの原子炉ユニットのうち1つが発火しました。原子炉は修復中でしたが核燃料を含んでいたため、状況は緊迫しました。戦闘の影響で消防活動も難航しましたが、放射線レベルの上昇は確認されませんでした。3月4日の朝には消防士が消火活動に成功し、その後、ロシア軍は発電所を制圧しました。同時に、ロシア軍はエネルホダル市にも進軍し、占領を完了しました。この戦闘の結果、エネルホダル市の暖房システムが機能停止に陥りました。

その後の状況

ロシア軍の撤退と再占領

3月5日、ザポリージャ州知事は、ロシア軍が都市を略奪後に撤退し、市が自治体の管理下にあると発表しました。しかし、オルロフ市長はこの報告を否定。ロシア軍が依然として市と発電所を占拠しており、自治体は市を管理しているとしました。3月7日には、ウクライナ軍南東方面本部が、エネルホダルがロシア軍の支配下にあることを確認しました。

発電所の運営への介入

3月6日、国際原子力機関（IAEA）は、ロシア軍が発電所の運営に介入していると発表しました。IAEAは、「6基の原子炉ユニットの技術的運営措置を含むプラント管理のあらゆる行動は、ロシアの司令官による事前の承認が必要である」と警告しました。また、ロシア軍が一部のモバイルネットワークとインターネットを遮断したため、現地からの正常な通信が困難な状況も明らかになりました。

まとめ

エネルホダル包囲戦は、ザポリージャ原子力発電所という重要なインフラを巡る攻防でした。住民の抵抗と、その後のロシア軍による占領、そして発電所の運営への介入は、この紛争がもたらす影響の大きさを物語っています。この戦いは、ウクライナにおける原子力安全保障に対する深刻な懸念を提起するとともに、紛争がもたらす人道的な危機を浮き彫りにしました。現在も、発電所と都市の状況は不安定であり、今後の展開が注目されます。

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