エビイモ

海老芋（えびいも）

海老芋は、サトイモの変種であるトウノイモの品種の一つで、独特の栽培方法によって湾曲した形状になります。その形がエビに似ていることから名付けられました。主に関西地方で食べられており、特に京都の伝統野菜として知られ、「京芋（きょういも）」とも呼ばれます。

概要

特徴

京野菜の一つとして知られる海老芋は、京都府を中心に近畿地方で栽培・消費されています。かつては京都府内が主な産地でしたが、現在は静岡県の旧豊岡村から旧竜洋町（現磐田市）にかけての天竜川東岸が日本一の産地となっています。しかし、農家の高齢化に伴い、生産量は年々減少傾向にあります。

海老芋は、先が細く反り返った形をしており、表面の皮にはっきりとした縞模様があるのが特徴です。大きなものでは長さ20cm、重さ250gほどにもなります。粘り気が強く、締まった粉質の肉質で、風味とほのかな甘みがあり、煮崩れしにくく色も変わりにくいという特徴があります。一般的なサトイモとは異なり、高級食材として扱われます。

料理

海老芋を使った料理として有名なのは、京料理の「芋棒」です。また、島根県の津和野町では、海老芋を使った芋煮が郷土料理として親しまれています。

縁起物

親芋から子芋へと次々に増えて成長することから、縁起物としても重用されています。

種類

海老芋には種類があり、茎が赤いものを「唐芋（本海老）」、茎が青いもの（黄緑色のもの）を「女芋」と呼びます。

歴史

海老芋の誕生

海老芋は、江戸時代の安永年間（1772-81年）に、青蓮院宮が長崎の土産として持ち帰った里芋を、仕えていた平野権太夫（芋棒で知られる京料理店「いもぼう平野家」の祖先）に栽培させたのが始まりとされています。「海老芋」という名前もこの頃に名付けられ、上鳥羽や九条で栽培されるようになりました。

磐田市での導入史

1927年（昭和2年）頃、磐田郡豊田町（旧井通村、現磐田市）役場の農事監督官であった熊谷一郎が、昭和の不況対策のための新作物として海老芋を導入しました。豊田町気子島地区の農家によって試作され、1931年には出荷組合によって生産販売の基礎が築かれました。当時、この出荷組合は気子島部落の約50戸で構成され、生産された海老芋は大阪、京都、東京の問屋に出荷され、高値で取引されていました。

その後、気子島地区が海老芋栽培によって高収入を上げていることが竜洋町豊岡（旧掛塚町）に伝わると、1938-39年にかけて竜洋町農業協同組合の組合長・伊藤弘がこれを栽培し、良好な成績を得たことから、この地域における海老芋栽培が大きく発展しました。1945年以降、同じ土壌条件である磐田市寺分や、豊岡村広瀬地区にも急速に普及し、磐田市は海老芋の一大産地として定着しました。

豊岡村では、天竜川上流に佐久間ダム・秋葉ダムが完成したことで、洪水の心配が少なくなった昭和30年代初めに、本格的に栽培されるようになりました。

当初は養蚕の後退に伴う桑に変わる転作作物として導入されたものでしたが、昭和30年代半ばになると、本場の京都や大阪周辺といった近畿地方の海老芋産地が次々と住宅地化されていったため、中遠地方が主産地となり現在に至っています。

栽培

栽培の流れ

1. 土を耕す。
2. ビニール（マルチ）をかぶせる。
3. 芽が出る方を上にして種芋を株間30cmほどあけて植えて、水をたくさんかける。種芋は育苗ポットに植えて催芽させ、芽が生長してから定植してもよい。
4. 種芋が育ったら親芋の葉を2、3枚とる。（葉かき）
5. 株元に土寄せを行い、少しずつ何回も繰り返す。梅雨明けまでに2、3回行う。
6. 葉が少し枯れてきた頃（10月から11月）に掘り上げて収穫する。

「土寄せ」は親芋由来の茎と子芋由来の茎の間に土を入れる作業で、これを行わないと子芋が親芋から離れず、本来の海老芋のように湾曲した形になりません。

栽培の要領

肉付きの良い海老芋を生産するには、肥沃で透水性があり、適度な湿度が保たれる土壌が望ましいです。種芋の大きさは40-80g（大きさを揃える）が良いとされています。10アールあたりでの種芋の数は、800-900個必要です。

栽培上重要なことは、施肥の量と時期です。海老芋は肥料障害を受けやすいため、植え付け時の決定は土壌の水分状態を見て行い、植え付けは雨降直後の土が十分に湿気を保っている時が良いでしょう。土が乾燥気味の時は、2週間前に施した肥料でも障害が出る場合があるため、乾燥しているときは灌水する必要があります。灌水不可能な場合は、元肥を種芋の下に施さないで株間に施すように留意します。追肥を施す場合でも、細心の注意と工夫が必要で、例えば追肥を4回に分施するのも肥料障害回避のためです。

その他の特記すべき点に摘葉・摘茎があり、子芋の肥大に欠かせない作業の一つです。親芋の茎葉を除くことによって、親芋の葉の先端が湾曲して十分展開しなくなり、これが子芋の肥大に好影響を及ぼします。