エフエム多摩放送

エフエム多摩放送（エフエムたまほうそう、FM Tama Broadcasting）

エフエム多摩放送株式会社は、東京都多摩市を中心とする地域を放送区域として、超短波放送（FM放送）を行っていたかつての一般放送事業者（現・民間特定地上基幹放送事業者）です。愛称は「エフエム多摩G-WIND（-たまジーウィンド）」として、コミュニティ放送を展開していました。

概要と歴史

1995年（平成7年）5月31日、多摩市の主導のもと地域に根差した情報発信を目指して開局しました。愛称である「G-WIND」の「G」には、エフエム多摩のイメージキャラクターだったヤマセミの英語名「Greater Pied Kingfisher」と「Green（緑）」の頭文字が込められています。「FM多摩」と表記されることもありました。

放送エリアは多摩市とその周辺地域に及び、多摩川沿いでは条件次第で西は昭島市、東は狛江市和泉多摩川付近でも受信可能でした。また、東京多摩地区だけでなく、神奈川県相模原市や川崎市の一部でも聴取できたとされています。通常のFMラジオ受信のほか、多摩テレビ（TTV）やUSENでも番組を聴くことができました。

開局当初の資本金は1億5,000万円で、多摩市、多摩商工会議所、京王電鉄がそれぞれ10パーセントを出資するなど、地域からの支援を受けて運営されていました。

しかし、社員数の削減や番組制作費の抑制といった経営努力にもかかわらず、広告収入の減少などが重なり、経営は次第に厳しさを増しました。累積赤字は約4,500万円に達し、さらに老朽化した放送設備の更新が喫緊の課題となりました。多摩市からの新たな財政支援が得られない状況となり、事業の継続は困難と判断されました。

これを受け、2010年（平成22年）2月には、同年3月31日をもって放送を終了し、会社を解散することが発表されました。これは東京都内におけるコミュニティ放送局としては初の閉局事例となりました。閉局が迫る3月24日からは1週間にわたり閉局特別番組が編成され、3月31日の24時をもって約15年間にわたる放送活動に終止符を打ちました。そして翌4月1日午前9時21分に電波が停波しました。

スタジオとリスナーとの交流

スタジオは、京王線聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩約1分の桜ヶ丘Kビル4階に位置していました。関戸公民館（ヴィータ聖蹟桜ヶ丘）の向かいというアクセスしやすい場所でした。オフィスやスタジオはエレベーターホールの目の前にあり、生放送中の様子を見学したり、メッセージやリクエストを直接届けたりすることが可能でした。番組表やチラシも入手でき、中には「風色の週末」などの生放送に飛び入り出演したリスナーもいたと言われています。

主な番組

エフエム多摩では、地域に密着した様々な番組を制作・放送していました。特に平日帯の生放送番組では、多摩市だけでなく稲城市、府中市、日野市、八王子市、立川市、国立市、町田市といった周辺市の情報や、多摩地域の交通情報などもきめ細かく提供していました。これらの周辺市でも多くのリスナーに聴かれていました。

主な自社制作番組（2009年4月期など）:
生放送帯番組: G-WIND LIVE Morning（月-金 8:00-10:00）、G-WIND LIVE Afternoon（月-金 12:00-14:00）、G-WIND LIVE Evening（月-金 16:00-18:00）
週末番組: 風色の週末さくら通りへようこそ（土・日 9:00-12:00）
主なコーナー: 京王チアフルモーニング、トヨタ西東京カローラハローマイタウン情報、いきいき多摩インフォメーション（多摩市広報）、ふるさと探訪、たまたまウォッチング、ぶら〜り音楽堂、おんがく辞典、TEA for SWING、G-WINDフレンズ、カズさんのわいわいTAMAパーク、多摩ふれあい交差点、多摩の歳時記

複数局ネット番組:
齋藤惣一朗のハートフルタイム（ラジオ3制作）
50過ぎたら聴きたいラジオ（クーペ＆Shifo）

過去に放送されていた番組:
花ラジオ、RED CROSSとビリケン（SHIBUYA-FM制作）、多摩川リバーサイドネットワーク（周辺FM局共同制作）など

また、自社制作番組の合間には、衛星放送による音楽配信サービス「ミュージックバード」の番組も多数放送していました。特にコミュニティチャンネルやジャズ専門チャンネル「ザ・ジャズ」からの番組が多く放送されていました。

地域イベントへの参加と主催

エフエム多摩は、地域のお祭りやイベントと連携した特別番組や公開生放送を積極的に実施しました。例えば、グリナード永山の記念イベントや、立川のアレアレアからの公開放送などが行われました。また、京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンター内のアウラホールでは、年に数回、エフエム多摩主催のライブイベントが開催され、様々なアーティストが出演しました。ライブの模様は後日特別番組として放送されることもありました。

開局当初には、多摩地域に住む100万人の市民に番組に出演してもらおうという「100万人参加キャンペーン」を展開するなど、市民参加型の放送局としての側面も持っていました。

閉局、そしてその後

惜しまれつつ閉局したエフエム多摩G-WINDは、短命ではありましたが、約15年間にわたり多摩地域に根差した情報と文化を発信し続けました。東京都内で初のコミュニティFM閉局という出来事は、その後のコミュニティ放送局の運営や支援のあり方についても一石を投じるものとなりました。

放送で使用されていたジングルはクールごとに変更され、クリスマスシーズンには特別なジングルが流れるなど、細部にもこだわりが見られました。また、非売品のステッカーや、Lサイズのみ販売されたTシャツといったオリジナル商品も存在しました。エフエム多摩の活動は終了しましたが、その記憶は地域の人々の心の中に残っています。

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