エフゲニー・プリマコフ

エフゲニー・マクシモヴィチ・プリマコフ：激動の時代を駆け抜けた政治家、学者

エフゲニー・マクシモヴィチ・プリマコフ（1929年10月29日 - 2015年6月26日）は、ソビエト連邦およびロシアの政治家、経済学者、東洋学者として、20世紀後半から21世紀初頭にかけての激動の時代に大きな足跡を残しました。

生涯

生い立ちと教育

1929年、プリマコフはウクライナのキエフで生まれ、グルジアのトビリシで少年時代を過ごしました。モスクワ東洋学大学でアラビア語を学び、その後モスクワ大学大学院を修了。アラビア語の学位を取得しました。1969年には経済学博士号を取得し、1997年には法政大学から名誉博士号を授与されています。

ソ連共産党入党とKGB協力

1959年にソ連共産党に入党したプリマコフは、『プラウダ』紙の中東特派員などを務めました。この間、KGBの協力者として諜報活動にも従事し、サッダーム・フセインらとも親交を深めました。クルド人との和平交渉にも関与するなど、中東情勢に深く関わりました。

学者として

1970年、ソ連科学アカデミー付属世界経済国際関係研究所（IMEMO）の副所長に就任。その後、東洋学研究所の所長も務めました。ゴルバチョフ政権下では、ソ連最高会議議員や大統領評議会議員を歴任し、湾岸危機では特使としてフセインとの交渉に当たりました。

ロシア対外情報庁長官

ソ連崩壊後、プリマコフはロシア対外情報庁の初代長官に就任。旧KGB対外情報機構を維持し、ロシアの情報活動を指揮しました。

外務大臣

1996年、外務大臣に就任。親欧米路線を修正し、ユーラシア主義的な外交を展開。中国や中央アジア諸国との連携を強化し、上海協力機構（SCO）の設立に貢献しました。NATOの東方拡大には強く反対し、ユーゴスラビア紛争ではミロシェヴィッチを支持しました。

首相

1998年、ロシア財政危機を受けて首相に就任。IMFからの融資を取り付け、経済の安定化に尽力しました。コソボ空爆に反対し、アメリカ訪問を中止した「プリマコフ・ループ」は、彼の反米姿勢を示す象徴的な出来事として知られています。

しかし、エリツィン大統領との対立が激化し、1999年に首相を解任されました。

首相解任後

下野後、政治ブロック「祖国・全ロシア」を結成し、下院議員に当選。プーチンが大統領に就任すると、彼を支持し、政界を引退しました。

政界引退後

2001年以降は、ロシア商工会議所会頭などを務め、プーチン政権に助言を与えるなど、影響力を維持しました。イラクのフセイン大統領との会談や、ミロシェヴィッチの弁護人として旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷に出廷するなど、国際政治の舞台でも活躍しました。

2015年、肝臓がんで死去。その功績を称えられ、国葬が営まれました。

人物像

プリマコフは、ソ連・ロシアの外交・情報活動を長年担い、中東情勢に精通した専門家でした。現実主義的な外交政策を推進し、多極主義を提唱。アメリカの覇権主義に対抗する姿勢は、国内外で評価されました。また、その老獪な政治手腕と、困難な状況下でもリーダーシップを発揮する能力は、多くの人々に尊敬されました。

エピソード

プリマコフは、3度の結婚を経験し、1男1女をもうけました。日本の仏教研究者である末次一郎との交流もあり、彼から贈られた般若心経を大切にしていたと伝えられています。

受賞・勲章

労働赤旗勲章
人民友好勲章
「名誉記章」勲章
三等「祖国に対する貢献に対する」勲章
二等「祖国に対する貢献に対する」勲章
ソ連国家賞
ナセル賞
アヴィツェナ賞
ジョージ・ケナン記章
ロモノーソフ金メダル

関連項目

* イーゴリ・イワノフ

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