エマグラム

エマグラムの概要

エマグラム（emagram）は気象学において用いられる断熱図の一種で、特に大気の温度と気圧の関係を表示するために用いられます。この図は、横軸に常数目盛の気温、縦軸に対数目盛の気圧を取って作成され、特定の地点の上空における気温、気圧、および露点の相互関連を可視化します。エマグラムは、大気の安定性を評価するために役立ちます。

エマグラム用紙の特徴

エマグラムのグラフには、主に3種類の重要な線が描かれています。1つ目は乾燥断熱線で、これは水蒸気が飽和していない空気が断熱的に上昇または下降する際の気温と気圧の変化を示します。2つ目は湿潤断熱線で、こちらは水蒸気が飽和している空気について同様の状況を考慮しています。3つ目が等混合比線で、これは乾燥空気1kgあたりの飽和水蒸気量が一定である際の気温と気圧の関係を示しています。実際にエマグラムを利用する際には、その地点の上空における実際の気温と露点温度を状態曲線として描写します。

他の断熱図との違い

エマグラムと他の断熱図との主な違いはその軸の設定にあります。エマグラムでは気温が縦に、気圧が横に直線的にプロットされるため「T log-P図」とも呼ばれます。一方で、気温が直線的に傾斜して表示されるSkew-T log-P図（スキューエマグラム）や、温位が対数的に示され、等温線と等温位線が回転させられたテヒグラムなど、他の断熱図も存在します。

エマグラムの適用

特定の地点における空気が強制的に上昇する場合を考えます。この時、エマグラム上の空気は乾燥断熱線に沿って温度が変化します。さらに、露点は等混合比線沿いに移動します。基本的に乾燥断熱線の傾きは等混合比線よりも急であり、一定の気圧では気温と露点が一致します。これにより、空気が水蒸気で飽和し、雲が形成されることが起きます。この現象は持ち上げ凝結高度（LCL）として知られ、観測される雲底の高さと一致します。もっと空気が上昇すると、湿潤断熱線に沿って温度が変化しています。

もし上昇中の空気の気温がある高度で実際の気温を上回る場合、その空気は周りの空気よりも軽くなり、自発的に上昇できるようになります。この自発的な上昇点は自由対流高度（LFC）と呼ばれ、ここで積乱雲のような対流雲が発生することがあります。

エマグラムの歴史と利用

エマグラムは19世紀の中頃、大気熱力学の研究が進展する中で1884年にハインリヒ・ヘルツによって初めて設計されました。その後、NeuhoffやVaisala、A. Refsdalといった研究者が異なる断熱図との比較や再分類を行い、エマグラムという名称が定着しました。特に、Refsdalが「単位質量当たりのエネルギー図」という概念からエマグラムの名を持つ略称を作り出したことも重要です。現代では、大気熱力学の研究や気象予報などの実務において幅広く使用され、日本国内では最も一般的な断熱図の一つです。エマグラムは、特に気象学の分野において大きな役割を果たしています。

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