エマヌエーレ・フィリベルト (サヴォイア公)

エマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイアは、1528年7月8日に生まれ、1580年8月30日にこの世を去りました。彼はサヴォイア公、ピエモンテ公、アスティ伯など、数々の爵位を保持していました。また、キプロス王とエルサレム王の称号も有していました。その勇猛さから「鉄頭（Testa di Ferro）」の異名で呼ばれ、フランス語ではエマニュエル・フィリベール・ド・サヴォワとして知られています。

生涯

エマヌエーレは、カルロ3世とポルトガル王マヌエル1世の娘ベアトリスの間に生まれました。エマヌエーレという名前は、祖父マヌエルに由来し、後にサヴォイア家の男子の名前として頻繁に使われるようになりました。彼はまた、従兄であるフェリペ2世らと共に、叔父エンリケ1世の跡を継ぐポルトガル王位の候補者にもなりました。

兄ルドヴィーコの早世により、エマヌエーレは後継者となり、1553年にサヴォイア公位を継承しました。しかし、当時のサヴォイアはフランスとスペインの対立によって戦場と化しており、フランスのフランソワ1世の軍隊に占領されていました。

若い頃のエマヌエーレは、政治と軍事の生活を送り、フランスから領土を奪還するために、神聖ローマ皇帝兼スペイン王カール5世（母の従兄で、また母方の伯母イサベルの夫）に従い、インゴルシュタット、ミュールベルク、メス、ブラなど数々の戦場を転戦しました。

1553年には、カール5世によって将軍代理とフランドルのスペイン軍の最高司令官に任命され、1556年にはフェリペ2世によってネーデルラント総督に任じられました。彼は、卓越した軍事的手腕を発揮し、スペイン軍の勝利に貢献しました。

1559年、カトー・カンブレジ条約が締結され、和平が成立しました。同年7月、エマヌエーレはフランス王アンリ2世の妹で、サヴォイア家出身の伯母ルイーズ・ド・サヴォワの孫にあたるマルグリットと結婚しました。この結婚は、政治的な意味合いが強く、サヴォイア家とフランス王家の関係を修復するものでした。結婚式は、アンリ2世が馬上槍試合での事故で瀕死の重傷を負った直後、急遽執り行われました。

マルグリットとの間には、カルロ・エマヌエーレ1世という一人の息子が生まれました。カルロ・エマヌエーレ1世は、1580年にエマヌエーレ・フィリベルトが亡くなった後、サヴォイア公位を継承しました。

エマヌエーレ・フィリベルトの生涯は、数々の戦いと外交交渉に彩られています。彼は、サヴォイア公国の独立と繁栄のために尽力し、その功績は後のサヴォイア家の発展に大きな影響を与えました。彼の「鉄頭」という異名は、その不屈の精神と軍事的な才能を象徴しています。

エマヌエーレ・フィリベルトは、単なる軍人としてだけでなく、優れた政治家としても評価されています。彼は、サヴォイア公国の再建と強化に尽力し、その後のサヴォイア家の繁栄の基礎を築きました。

彼の生涯は、中世から近世への移行期におけるヨーロッパの政治と軍事の激動を反映しており、歴史を学ぶ上で重要な人物の一人と言えるでしょう。

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